第145話 歓迎会?
支援と言っても粗方更地になっているので、やる事と言えば復興のお手伝いだけである。
一通りの作業が済んで全員が一息をつくと歓迎の宴会が始まった。
今回は交流が目的なので人間同士、晶霊同士で集まって宴会が始まった。
「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」
黙々と御飯と酒を飲む人間一同。
どちらもウス上皇側とツツカワ親王側に分かれて互いに黙っての宴会になった。
それもそのはずで追い出された上皇側と追い出した今上神皇の側である。
ウス上皇自身も名君と慕われており、近侍の者のレベルが高く、忠誠心も厚い。
一方、ツツカワ親王も西海太宰として大きな貢献をしてきた男なのでこれまた忠誠心の高い連中が集まっている。
人間の方は静かに始まっているのだが、一方ですでに盛り上がり始めているのが晶霊たちである。
『いやー疲れたね』『こっち酒無いよ!』『もっと食べようぜ』
元々細かいことを気にしない陽気な性格ゆえにすぐに打ち解けている。
晶霊は軍人の意味合いが強いのだが、共闘したり敵になったりが多いので細かいことは気にしない。
仲良くなればよいが基本だ。
とはいえ、これは良くあることで、大概が晶霊側に引っ張られるように人間も仲良くなるのだ。
それはそれとして、旧交を温めている奴らが居る。
『シュンテン殿。まずは一杯』
『トーノ殿。かたじけない』
トーノとシュンテンが一杯やっていた。
この二人は皇都に居る時から仲が良かった。
特にトーノとシュンテンは同期で二人とも打倒ヨミに燃えていた間柄でもある。
『どうですか? こちらの暮らしは慣れましたか? 』
『慣れてはおるんじゃがのぅ……』
寂しい顔になるシュンテン。
心なしか、いかつい顔が弱弱しい。
『慣れ過ぎて困っておるんじゃ……』
『……どういう意味です? 』
シュンテンは寂しい顔のまま、顔を俯かせる。
『ウス様がのぅ……もう帰りたくないと言っておるんじゃ……』
『……ウス様が? 』
意外そうに尋ねるトーノ。
シュンテンは悲しそうにぼやく。
『わしはウス様にもう一度皇都で親政を振るって欲しいんじゃよ。この有様ではヨルノースが滅びかねん』
『・・・・・・・・・・・・・・』
トーノは何が言いたいのかがすぐにわかった。
今上神皇ははっきり言って佞臣の言いなりである。
汚職や横暴が横行しており、ヨルノース皇国が荒れている元凶である。
『今のあいつらはなんじゃ? 好き勝手しよって! 民がかわいそうじゃ……』
『シュンテン殿……』
トーノにもそう言った思いはあるし、実際に追い出された側である。
それ故にシュンテンの苦悩が嫌と言うほどわかった。
『わしは悔しい! あんな連中よりはタトク様が百倍良いのに! 』
『・・・・・・・・・・・・』
トーノは黙って話を聞いていると、一人の女晶霊が声を掛けてきた。
『あ、あの!シュンテン様! 』
『どうしたアンコ? 』
『変なジジイが合体しようと言い寄ってくるんですが……』
シュンテンが座った目で女晶霊が指さした先を見る。
『そこのねえちゃーん! 俺と合体しようぜぇ~♪ 』
『な、なに! 』
『なんかジジイがこっち来る! 』
『やだキモイ! 』
逃げ回る女の子を追い掛け回すヨミ。
『あのバカ……』
トーノは頭を抱えることになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます