第113話 強敵
刀和は必死でアウルを巧みに操っていた。
(なんてやつだ! )
ヨミはこの世界の晶霊の中でもダントツの速さを誇る。
とにかくすり足が上手いので早く動けるのだ。
圧倒的な早さを誇るヨミに平然と追いかけるクラゲ晶霊。
『流石ヨミ様! 私の動きについてくる晶霊は初めてです! ますます合体したいですわ♪ 』
そう言って触手をビュンビュン飛ばしまくるクラゲ晶霊。
ヨミも必死で捌きながらも苦しそうにぼやく。
(なんでこいつがこんなところに! )
(知ってる人なの? )
(知ってると言えば知ってる! )
変な答え方をするヨミ。
捌きながらウマカイの屋敷を破壊してその上を飛び越える!
『逃がしませんわ! 』
ヨミと同じように飛び越えるクラゲ晶霊。
だが、ヨミは崩れた建物を思いっきり踏んだ!
どごぉ!
『くぅっ! 』
建物にあった梁がヨミの踏みつけで跳ね上がってクラゲ晶霊の胸に強打される。
慌てて距離を取るヨミとクラゲ晶霊。
ヨミは肩で息をしてクラゲ晶霊を睨み付ける。
刀和はクラゲに注意しながらも尋ねる。
(どんな晶霊なの? )
(一言で言えばヤンデレ! )
(や、ヤンデレ? )
妙な言葉が出たことに訝しむ刀和。
(やたら俺に執着する女でな! 俺と合体したがるんだ! )
それを聞いて顔が一瞬無になるがすぐに異常に気付く。
(……じゃあ、なんで合体してあげないの? )
(あいつは毒で身動き取れなくしてからやるのが好きなんだ! )
(なんだよそれ! )
刀和が大声で叫ぶがヨミは続けて怒鳴る。
(しかも奴の毒は超痛い! その上、相手をそのまま縛り付けて自分の物にしたがるからヤバいんだよ! 超サド気質の監禁束縛女でな! いたぶりながら合体するのが趣味という極悪な女だ! )
(迷惑な……)
流石の合体好きのヨミもこれは嫌なのだ。
(あいつに捕まったら最後だ! 俺達はそのまま持っていかれてあいつの牢屋で暮らす羽目になるぞ! )
(絶対倒そう! )
(ああ! )
危険を感じて勝利を誓う二人。
一方、クラゲ晶霊はくねくねと嬉しそうに体をくねらせる。
『ああん♪ やっぱり最高ね♡ こんな方と合体したらどんなに気持ちいいかしら……』
((あれは絶対やべぇやつだな))
二人して冷や汗を流して恐怖する。
するとトヨタマとタマヨリがやってくる。
『これは一体……』
『あの晶霊は一体なんですの? 』
不思議そうな二人だが、ヨミはそれどころでない。
『いいからお前たちは救援呼んで来い! こいつは加勢したぐらいでどうにかなる奴じゃない! 』
『そんなにヤバい奴なの……』
ヨミのただならぬ態度に恐怖する二人。
『痺れてても中の相棒ならアウルを飛ばせるからとにかく逃げろ! 俺がしんがりを務めるからとにかく早く逃げろ! 』
『わ、わかったわ! 』
慌てて逃げようとする二人だが、ヨミは呼び止める。
『待て、アカシだけはこっちに呼んでくれ』
『どうして? 』
『合体しないと勝てない』
汗ダラダラで答えるヨミ。
(それだけの強敵ってことなんだね)
(ああ、正直合体しても勝てるかどうか……だが、逃げ切るぐらいはできるだろう)
ヨミにしては弱気の発言であるが、さすがの刀和もこれは本気と感じた。
(さっき言ったみたいにアカシを呼んできてくれ)
(この状況で出たらまずいんじゃない? )
(大丈夫だ。知ってる奴に超そっくりだから、ビビったが……あいつがここにいるはずがない。あいつが狙うのは俺だけだから、お前はノーマークになるはずだ)
(わかった)
むにょん
そう言って一旦外に出る刀和。
それを見てクラゲ晶霊が少しだけ不機嫌になる。
『あら? 相棒を放すんですの? もっと本気を出してもらわないと……うん? 』
クラゲ晶霊が少しだけ動きを止める。
そして嬉しそうにくねくね体をくねらせながら笑った。
『あらいやだ。私の相棒があなたの相棒と合体したいって♡ 私たちやっぱり運命の相手なのね! そうよ! きっとそうに違いないわ! 』
「『絶対違うからな! 』」
ヨミと刀和の二人が本気で怒鳴った。
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