第77話 覗きイベントは終わらない!


 一方、女湯では瞬と合流したオトの二人がサウナに入った。

 女性のお風呂の入り方と言えば、こちらは襦袢姿なので特に湯気も逆光も必要無いのだが、垢すりをしている時は普通にはだけている。

 瞬はショートカットなのでそのままにして入っており、オトは髪を盛りまくっているので、それを髪留めでまとめてからお風呂に入っているだが……


「何よこれ……」

「あたいにもさっぱり……」


 襦袢姿の瞬とオトが首を傾げるのも仕方がない。

 男湯と女湯の間の壁には鉄板が置いてあったのだが、その鉄板がどけられて、穴をふさいでいた板を順次外している女の子たちが居た。


 全員が刀和を落とそうとハニートラップを仕掛けていた連中である。

 オトが不思議そうに尋ねる。


「何やってんの? 」

「しっ! 気付かれるでしょ! 声は小さく! 」


 そう言って必死で覗こうとする女の子たち。

 

「今、穴を使ってトワ様の『アレ』を一目見ようとしてんのよ! 」


 そう言って穴をこじ開ける女の子たち。

 オトが首を傾げる。


「何でそんな真似を? 」

「さっき男湯から聞こえたのよ! トワ様の『アレ』が超絶でかいって! 」


 嬉しそうに笑う女の子と呆れるオトと瞬

 すでに覗いている女の子が声を上げる。


「すっごーい! 超デカい! 」


 そう言って手ぶりで大きさを作って見せる女の子。

 それを聞いて好奇心に目を輝かせる他の女の子たち。

 全員が必死で穴を覗こうと頑張っている。


 それを見て呆れる瞬とオト。


「何やってんだか……」

「本当に……」


 呆れる二人を尻目に覗きに頑張る女の子たち。

 すると、一人がぽつんと呟いた。


「でもまだ大きくなってないでしょ? 大きくなったらどうなるんだろ? 」


 その一言で全員が考え始める。

 すると、一人が急に変な声を上げ始めた。


「いやーん♡エミってとってもオッパイがおっきいのね♪ 」


 それを聞いて全てを察する女の子たち。

 全員が男湯に聞こえるような声で言い始めた。


「ちょっやめてよぉ♡ あんっ♡ そ、そんなところ触らないでぇ♡ 」

「やめて♡ そこは感じちゃうの♡ 」

「ああぁん♡ 乳首立っちゃったじゃない♡ 」


 ちなみに口で言っているだけで誰一人としてお互いの体を触っていないし、ついでに言えば全員が襦袢を着ているので湯気で体を隠す必要性すらない。


 喘ぎ声を担当する女の子と覗き見る女の子に分かれて、しばらくやっていたが覗いている女の子の顔が曇っている。


「中々大きくならないわねぇ……」

「むぅ……」

「さっきこっちの方を見てたから上手い事こっち見てくれればいいのに……」


 さらっと問題発言する女の子たち。

 そんな彼女たちをあきれ顔で見つめる瞬とオト。


「別にそんな良いものじゃないのにねぇ……」

「あんなグロテスクなもんをわざわざ見たがるなんて……」


 口々にぼやいて騒ぐ女の子たちを呆れ見ている二人。

 だが、そんな二人を無視して女の子たちは騒ぐ。


「見て! 湯女がトワ様の背中を洗い始めたよ! 」

「本当だ! 見て見て! 湯女がさらっとオッパイ押し付けてる! 」

「あれは一晩を狙ってるね! 」


 そう言ってかぶりつきで壁の穴を見てる女の子たち。

 瞬はつまらなそうにぼやく。


「だから、別にそこまでして観る必要はないでしょうが」

「シュン。その子をどけて覗き始めたシュンが言う資格無いよ? 」


 覗いていた女の子をどけて覗き始めた瞬に後ろから突っ込みを入れるオト。


「あたしの穴返してよう……」


 気弱そうな女の子が瞬を涙目で睨んでいるが、瞬はお構いなしで見ている。

 刀和は顔を真っ赤にして湯女のされるがままに洗われているが、明らかに必要がないぐらいに洗われている。

 いらっとして呟く瞬。


「なんで自分で洗おうとしないのよあのスケベ」

「覗いているシュンも人の事スケベって言えないよ? 」


 イライラしながら向こうを見る瞬とさらっと突っ込むオト。

 すると、ついに刀和のガンバスターが発進し始めた!


 ちゃーちゃちゃ♪ ちゃーちゃちゃ♪ ちゃららら♪(ガ○バスター発進のテーマ)


 それを見て慌てるライン。


『ちょっ! お前何おっ立ててんだよ! 』

『だ、だってこんな洗い方されたら立っちゃうよ! 』


 恥ずかしそうに弁明する刀和だが、女の子たちからも歓声が上がる!


「「「「「きゃ~♡ でっっっかぁぁぁぁい♡ 」」」」」


 嬉しそうに笑う女の子たち。

 すると湯女の方が嬉しそうに言った。


『あらあら♪ こんなおばさんで良ければそちらも処理しますよ? 』

『け、結構です! 』


 そう言って慌てて外へと逃げる刀和。


『おい待てよ! 』


 それを追いかけるライン。

 一部始終を見て呆れかえる瞬。


(……後で絶対シメる……)


 心に固く誓ってから穴から顔を遠ざけてぼやく。


「全く……一体何やってるのやら……どう思うオト? あれオト? 」


 いつの間にか隣に居たオトが居なくなっていたが、すぐに見つけることが出来た。

 少し離れた場所で手でメガホン作って何か言っていた。


「はい、タダ見はダメよ!タダ見はぁ! ちゃんとお金払わないと駄目よ~? 」

「どさくさ紛れて商売始めてんじゃないわよ! 」


 瞬はオトの頭を小突いた。



用語説明


お風呂


 この世界では、お風呂は水風呂とシャワーのみです。

 一応、ポンプがあるのでシャワーも可能なのだが、足踏み式がめんどくさいのであまり普及していいない。


 ちなみに日本各地にある古来からの温泉地の正体は温泉のついでにエッチなサービスをする風俗だったようです。

 ちなみに月海は火山活動が無いので温泉はありません。


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