第27話 海賊来寇
ヨルノース皇国には『九地』と呼ばれる地域に分けられる。
機内六州
西海八州
南海六州
山陰七州
山陽六州
北陸五洲
東山六州
東海七州
関東六州
ソーマ郡司マサドは関東六州のフサ国で、リューグの町は西海八州のツクシ国である。
そして南海六州は西海の東で隣接しているのだが、事件はこの南海で起きた。
『ぐぎゃぁぁぁぁ!!! 』
一人の晶霊が槍に貫かれて殺された。
付近一帯は阿鼻叫喚の地獄と化していた。
「いやぁぁぁぁぁぁ!!! 」
「大人しくしろ! 」
少女が複数の男に囲まれてなすすべもなく蹂躙されている。
そのそばには父親と母親らしき二人が胸や首から血を流して死んでいる。
なんでそうなっているのかと言えばこの町が何者かに襲われているからだ。
ここは南海のイヨ国の国都で、普段は50人近い晶霊が守っている都市だ。
その国都がなすすべもなく襲ってきた連中に蹂躙されている。
晶霊の一人が少女を襲っている男たちに声を掛ける。
『楽しんでるかぁ? 』
「「「「「うぇ~い!! 」」」」」
「いやぁぁぁぁ!! やめてぇぇぇぇぇ!! 」
嬉しそうに声を上げる男たちと悲鳴を上げる女の子。
その時だった!
ズビュゴリ
晶霊の胸から槍が飛び出して、辺りに血煙が舞う。
『ぐぎゃがぁぁぁぁ!!! 』
『この野蛮人が! 』
その言葉と共に槍が引き抜かれて晶霊が何者かに蹴られて飛ばされる。
死んだ晶霊の後ろには別の晶霊が槍を持って立っていた。
豪奢な鎧を着ており、高位の晶霊であること思わせる出で立ちであった。
そして彼の持っている槍が、すぐに少女を襲っている男たちの方へ向く。
『このクズどもが! さっさと失せよ! 』
「「「「「ひぃぃぃぃぃ!!! 」」」」」
あっけなく逃げていく男たち。
一方、ボロボロになった少女は、汚れてしまった体を見てすすり泣いていた。
『だれか! この子を助けてやれ! 』
「はい! 」
後ろに居た数人の人間が慌てて少女を救助する。
槍を持った晶霊が辺りを見渡す。
『迂闊であった! 』
晶霊はこのイヨ国の小毅(しょうき)と呼ばれる言わば国の晶霊のボスだった。
(すまぬ……わしが軽く考えていたばかりに……)
(今更だ。気にするな……)
晶霊のお腹では彼の相棒である国司が激しく後悔していた。
国司は伝統的に中央から派遣されるのだが、基本は晶霊将から選ばれる。
こういった場合に対処できるようにしてあり、実際に彼は海賊などの攻撃への対処法を準備をしていた。
(規模が予想以上だった。まさか百以上の晶霊が襲ってくるとは……)
(早めに叩くべきじゃった……)
近隣で急に海賊が力を持ち始めていたとの情報は入っていたが、迂闊に討伐のために兵を集めて南海の太宰に叛意有りと受け取られかねない。
そのため、討伐許可を太宰に伺ったのだが、『検討中』とのことで中々討伐に踏み切れなかった。
それが災いして、気が付いたらこれほど勢力を持っていた。
(何故、南海太宰は討伐を止められたのか……)
(今はそこを言っても仕方なかろう……)
イヨ国小毅は槍を構えて敵へと向かって行った。
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