かつて翼を持つある部族がいた。
そこに『救世主(メサイア)』と名を与えられた少年がいた。炎を操る能力を持った彼はその名の自負とともに族長となるべく使命感と責任感とともに生きてきた。
そんな彼だったが、その使命はある時突然終わりを迎えた。
もうひとりの少年の名はエクセリオ。
幻影の力を天才的に、そして無邪気に発揮していく彼こそが、真の救世主として受け入れられる。
アイデンティティを喪い、栄光から一転、侮蔑される日々を送っていたメサイアだったが、そんな彼を慕ってくれるのは、皮肉にもそのエクセリオだけだった。
そんなふたりを主軸に展開していくストーリーですが、それだけに両者の対比の描写が心をえぐるほどに上手い。
特に主眼となるメサイアの転落や心理描写は秀逸の一言。
単純な嫉妬や憎悪だけではない、エクセリオには一切の非がなく、むしろ唯一の自分の味方であるからこそ割り切れない部分を抱えている。そしてその抑圧こそが後々に悲劇を生む……という過程がしっかりしているから、設定が多くともストーリーが追いやすい作品となっています。
単純なブロマンスでは満足できない。もっとドロドロしたものを見せて頂戴! という人にオススメの、今後に期待できる良作です。