第60話

戦いから、数時間後。

刺突剣の状態から人間の見てくれに戻った仙失に、六畳ヶ原は山から降りないかと提案をした。

またさっきの化物が襲ってくるかわからないし、そこの鍋の中にある食料もいつ尽きるかわからないからと。

その言葉に、仙失は何か言いたげにしたが、どうやらそれは飲み込んで、

「……まぁ、そうしないといけない「気」はしていました……。どうやら、このヤバイバにも終わりが近付いている「気」が……、いや、これは「気」ではありませんね。……確信です。このヤバイバの寿命は……私達の働き次第ですが、そう長くはありません。…………どうやら私も、ここで寝ている訳にはいかなくなったようです……」

どうやら仙失かのじょにも、刀としての気概は最低限あったらしい。

ぐったりと横たわるのを止め、今は壁にもたれかかっているものの、立ち上がっている。

「私の力があれば……、まぁ、霧の中は進めます……。降りますか……。その道中で、このヤバイバについての説明も……しますよ」


そして下山途中、六畳ヶ原は山の下の方が化物バイバがたくさんいること、そして小屋の鍋の中の料理はいくら食べても減らない事を聞かされたのだった。



こういう事があったわけで。

座頭と蛟が霧切山の頂上にやっとの思いで到着した頃には、仙失は山を降りていて、そこはもぬけの殻だった。

「……仙失が動くとは……、予想外でした……」

「その顔を見ると、本当に予想外だったみたいだね……。よく見ると戦闘の跡がある。そこで何か起こったのだろうね……」

「……鍋食べて……下山しますか……」

「……そうだな……」

こうして、妙な哀愁を漂わせながら。

座頭達は少し腹を膨れさせて、山を降りたのだった。


こうして、ヤバイバと言う戦場のさらに「ど真ん中」に、座頭含め5本の刀が出揃った。

残る刀は、あと1本……。

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刀戯伝 ポルンガ @3535mim

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