第54話
「えっ……あっ……」
そして、そんな2人組の姿を見たとき。
六畳ヶ原の息は自然と苦しくなり、言葉を上手く発する事が出来なくなった。
それどころか、ブワッと全身から嫌なねっとりとした汗が吹き出し、足がガタガタと震えている。
……感じたのだ。
六畳ヶ原の体が、脳ミソを差し置いて。
反射とも言える危機察知能力で、この2人組の正体の、1番肝心な所を看破した。
(この2人は……、私の敵だ……。決してこの世界から出ようとしている私と協力することは無く……、むしろそんな私を殺そうとする……)
「ひっ……!」
六畳ヶ原は先程よりも深い絶望から呻き声を上げると、ガタンと戸を締め、小屋の中に逃げ戻った。
(不味い……、不味い不味い不味い不味い不味い!!!!)
六畳ヶ原はペタりと座り込み、肩を抱えてガタガタと震えた。
「おや……、小屋に入ってしまった。困りましたねぇ……」
「ま……、待てば待てば待てば良い……。それそれそれに、ここには脱刀がある……。我々はそれを壊しに来たのだ……。あのあのあの小僧がいようがいまいが、関係はない……」
「まぁ、それもそうだねぇ。いざとなれば、殺してしまえば良いのだし」
そんな会話が、扉の向こうから聞こえる。
何も聞きたく無いのに、六畳ヶ原の耳は、こんな時に過去1番の聴力を発揮していた。
(くそ……、どうする、どうする!?待つって一体どれくらい!?数分!?数時間!?数年!?いや、そんな事より殺される!?私殺され……!!)
「固まって……ますね……」
「!?」
突如現れた脅威に、パニックになった六畳ヶ原の頭を叩いたのは、小さな少女の声だった。
相変わらず、生気の無い声。
しかし今の六畳ヶ原にとって、それは苛立ちを覚えるものではなく、天使の囁きに聞こえた。
「いえ……、こんな事を言う「気」も既に無くなってきているのですが……。多分……、六畳ヶ原さんですか?着物の袖に小さく名前が縫われている……。突然現れたギバイバの恐怖に当てられて……、思考が悪い方に固まっている「気」がします…………」
「は……」
「力を脱いてください……。難しいかもしれませんが「
「……」
つまり、彼女は落ち着けと言っているのだろうか。と、六畳ヶ原はいつもの数倍の頭を使って冷静さを少し取り戻し、少女の言葉の解釈に努めた。
「そして……、私に戦う「気」はありませんが……、もし、六畳ヶ原さんがあの2体のギバイバと戦い、この状況を切り抜けようとする「気」があるならば……、私も、あなたに振るわれましょう……。まぁ……私は戦う「気」では無いのですけど……」
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