第50話
「夜桜さん、何か楸さんから彼の「生い立ち」……。または特技でも、何でも良いです。彼の「幸運」について、何が聞いてませんか?」
「い……、いや、何も……。何だいきなり、楸さんって、運が良いのか?」
「……ええ、まぁ私の見立てですが」
どうやら夜桜は何も知らないようで、興味深そうに烈白に聞き返してくる。
「私も最初、緑仙に少し聞かされただけでした。運が良いと……。私はそれを致命傷になった傷が今まで少なかったとか、ギバイバと遭遇した回数が少なかったとか……。そういう今まであった事を総括して、彼の事を形容したのかと思っていましたが……」
「……なんだ?違うのか?」
「夜桜さんが気絶した後、夜桜さんに破流雨が接近した時がありました。その時破流雨を迎撃したのが楸さんだったのですが……」
烈白は言葉をつむぎながらも、自分の言っている事が半ば信じられないと思っているようだった。
1つ1つ言葉を選びながら、慎重に言う。
「最初、楸さんは破流雨に6発の銃弾を撃ち込み……、それらは1度ギリギリの所で破流雨にかわされてしまったのですが……、銃弾の幾つかは、地面にぶつかって跳弾し、破流雨に当たったのです」
「お……、おお。まぁ、ラッキーと言うか、結果オーライじゃないか」
「いえ……、よく考えてください。地面に当たって発砲された銃弾が跳弾すると思いますか?普通、めり込むはずです。例え小さな石にぶつかったとしても、おそらく跳ねると言うことはないでしょう……」
「だ……、だからお前は何を言いたいんだよ」
「つまり、楸さんの放った6発の銃弾は、その銃弾と同じくらい硬い物に当たって、跳弾したと言うことです」
「で……、でも、やっぱり銃弾ってのは鉄製だろ?そんな硬いもんが地面にゴロゴロ落ちてるのか?」
「ゴロゴロ落ちてはいませんよ……。ただ、「めり込んで」はいます。たったの2つですが……。数分前に楸さんが突雨に放ち、弾かれた銃弾がね……」
「っ……!まさか、その弾かれてそこら辺にめり込んでた銃弾に当たって、跳弾したってことかよ……?」
「ええ、私の考えうる範囲では、おそらくそれが結論です。そしてそれを、楸さんは狙った様に見えた……。楸さんは拳銃の扱いの心得があるとは言え、そこまでの神業が出来るとは到底思えません。つまり彼は自分の「幸運」を自覚し、そしてそれを信じて、頼って。狙い通りに事を運んだと考えます」
「……いや、それはもはや「幸運」とかじゃ無くてもはや1種の超能力か異能力だろ!「幸運」ってのは偶然、たまたま起きるから「幸運」なんだ……。自分で狙って「幸運」を起こせるなら、それはもうそういう技術だろ!」
「確かに、そうなのかもしれません……。ですが、
そう言うと烈白は深く椅子にもたれ、疲れたようにふぅーと息を吐いた。
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