第41話
上には上がいる。ということだ。
ここで彼らをぶちのめしたとしても、それを聞いたこの男達よりも上の立場になる人間がやって来るかもしれない。
そしてもしその上の者を倒したとしても、さらに上の者がやって来る。
そしてそれは数を重ねるたび、家族や、自分に近い者にもその影響は広がってくるのだろう。
ヤンキーが、家にやって来るかもしれない。
学校にやって来るかもしれない。
そしてそこで、自分の名前を耳障りな大声で呼ぶのだろうと思うと、少年の彼らに対する怒りや反抗心は、不思議と小さくなっていくのだ。
頭は熱くなるどころか、むしろ冷えきってしまっている。
「てんめっ……。殺してやるよ!!」
「「「「うおおおおっっ!!!」」」」
後ろにいた男達が少年を取り囲む様に広がり、一斉に少年に殴りかかった。
数分後。
そこには、少年を中心にして倒れる男達の姿があった。
「…………」
結局少年は、1人の男の拳がみぞおちに入った事を機に、反撃をするようになっていた。
そこからはひどくあっさりしたもので、男達は少年の拳に防御した腕ごと破壊され、数秒で全滅した。
「……やってしまった……」
少年の頭には達成感は無く、それとは全く逆の後悔に支配されていた。
自分の忍耐力の無さ、そして自分の体の丈夫さを、少年はこの時、いやというほど憎んだ。
こうして少年の……夜桜の戦いの日々は、ヤバイバに送り込まれる前から既に始まっていたのだった。
ガガッ!と、ヤバイバに乾いた音が響いた。
そして少し鼻につく、焦げたような匂い。
夜桜が隣を見ると、そこにいた楸の両手に2丁の拳銃が握られていた。
1つは全身を赤く、そしてもう1つは白く染めた、やたらと派手な色をした拳銃だった。
「2丁拳銃、「
「そ……、そうっすか。凄いですね。そんな簡単に両手で拳銃を同時に使うなんて……」
「まぁ、結構練習したからね〜。緑仙に頼りきりになりたくなかったし。まぁ雑談はこれくらいにして……来るよ!」
やはりと言うべきか。
突雨はその両手に持った槍で、しっかり白鴎と香桜から放たれた銃弾を弾き飛ばしていた。
「高速で放たれる鉛玉か……。ちょこざいなっ……!」
突雨が、地面を蹴る。
緑仙と破流雨が落ちた大穴を飛び越え、真っ直ぐに楸を狙って槍を振るう。
「うおおっ!!」
その間に割って入ったのは、夜桜だった。
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