第39話

緑仙の反撃により、地面にどっかりとあいた穴に緑仙と破流雨が落ちた後。

地表に取り残されたのは、夜桜、烈白、楸、そして破流雨が入り込むスペースを作るため、少し後ろに下がっていた突雨。

実質的、3対1の状況だった。

(さて……ここまでは作戦通りかなぁ〜?)

ゆらりと力の抜けた瞳で戦場を見回しながら、楸は思考する。

(ここに来るまでの道で夜桜くん達に説明した作戦……。それは始めに、とりあえず僕と緑仙が何とかして突雨と破流雨を分断させる……)

これを夜桜達に言った時、烈白は少し苦い顔をして、「ぼんやりしていますね」と言われてしまった事を思いだし、楸は少し苦笑いをして

「はは〜、僕らは案外、細かく作戦を決めるよりは、その場で臨機応変に戦うってのがあっててね〜」

と言った。

そしてそれは確かに本当で、今まで楸と緑仙は倒してきた5体のギバイバ達を全て「初見」の状態で倒していた。

(僕が何も出来てないけど、まぁ成功したか良し。それより問題はここからなんだよね〜〜)

そしてここからの作戦。

それは、この領域において最強の日本刀と称される烈白に、分断した突雨と破流雨を撃破してもらうと言うものだったのだが、

ここで1つ、楸の考えていなかった問題が生じた。

「私の能力を使うには、少し「溜め」がいるのです。集中する時間が、いるのですよ。1分間ね」

「……まじぃ〜?」

楸がその事を烈白から聞かされたのは、もう既に2体のギバイバが目と鼻の先にいる状況で、作戦の変更は、出来なかったのであった。

「私は溜めている間、一切動くことが出来ません。それに、目も閉じます。出来る限り外からの情報ををシャットアウトするので、完全な無防備状態になってしまうのです」

はっきり目を見て、そう楸は烈白に言い切られた。

(それでも、多分あの突雨と破流雨は一緒に戦う事で本来の力を発揮するタイプだったんだろうからなぁ〜〜。まぁ、これしか無かったんだけど、手段〜)

「つーわけで、夜桜くん。ここが僕達の踏ん張り所だぁ〜〜。1分間、突雨を僕達で足止めするよ」

「…………うっす!」

パンッ、と拳を合わせ、力強く楸に答える夜桜。

(……この領域に来たばかりで、ギバイバを目の前にして、ここまで動揺していないなんて……。夜桜くん、君は一体どんな人生を送って来たんだいー……)

そんな夜桜の様子を見て、楸は若干の恐怖と尊敬を抱いたのであった

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