第28話
「うおーー!!やったぞー!!俺はやったぞー!!そしてやっぱり元の世界に返せ!!こんなもんがうろついてるならなおさら戻りたくなったわ!!」
「いえ、凄いと思いますよ。何の変哲もないただの拳でバイバを殴り飛ばしたのは、あなたで58人目です」
「結構いるじゃねーかちくしよぉぉぉ!!!」
しかし、そのほとんどが武器を失いやけくそ。または錯乱状態に陥っていた者が多いのだが。
(しかし本当の意味で、自分の拳を武器にバイバに立ち向かったのは3人程でしたが……)
それを言っても「3人いるじゃねーかぁ!!」と夜桜に言われそうだったので、烈白は黙っておいた。
「取り敢えず、北に向かいます」
烈白のその一言で、2人は行動を開始した。
烈白によれば、そこにこのヤバイバに送り込まれた人間が集まる集会所的なものがあるとの事だった。
夜桜も最初はごねていたが、どうやらそろそろ烈白に自分を元の世界に戻す力が無いと悟った様だ。
今は黙って「烈白の背中の上にいる」。
つまり、おんぶされているのだ。
夜桜が、烈白に。
まるで、サーカスで熊が小さな三輪車をこいでいるような、そんな滑稽な姿でもあったが、烈白は至って真面目だった。
夜桜の身体能力は高く、それこそ持久力、走力もトップアスリート並だ。
しかし烈白のそれは、トップアスリートを遥かに凌駕する。
体重80キロを超す夜桜の体を軽々とおぶり、足場の悪いヤバイバの地面をものともせず、軽快に進んでいく。
「…………」
烈白の背中に乗せられた夜桜は、小さく振動が烈白の体を伝って来るだけで、快適の一言。
自分が共に走るより、遥かに移動速度が速いことも分かる。
「でもこれは駄目だろ!!いや速いよ!、お前が真面目なのもわかるよ!でもこれはヤバいだろ!!児童虐待じゃん!!」
「夜桜さんのほうが私よりかなり年下だと思いますけどね」
「え……、お前何歳なん?」
「少なくとも100は越えていますね」
「…………」
ドタドタドタドタと、数秒間烈白の地面を蹴る音だけが夜桜と烈白の間に流れた。
「まぁ……、そう言う感じの人と本当に出会うとは思わなかったよね……」
「そうですか。……まぁ良いです、それより着きましたよ」
夜桜は待ってましたといわんばかりに俊敏に烈白の背中から降り、目の前の集落を見た。
おそらく、今までと同じ様にここにある家に生活している住民はいないのだろう。
いるとすれば、あてもなくうろつくバイバか、夜桜と同じ境遇であろう21人。
集落の中に入ると確かにここは、この領域に拉致された人間達が集会所とするのに適していたのかもしれないと、夜桜は感じた。
規模が大きいのだ。集落の。
いや、ここはもう集落と言うより町と言っても良いかもしれない。
烈白と夜桜が町に入った場所は、どうやら町の大通りの入り口のようだった。
大きな一本道を囲むようにして、たくさんの商店と思われる建築物が並んでいる。
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