第27話

「ま……、早く元の場所に俺を返せ。俺は結構忙しくてなー。ま、烈白。てめぇがやったんだろ?こんな所へ俺を拉致したのは。まぁ俺に気付かれずこんなところまで連れてきたのは誉めてやるが……。お前も早くこんな所から出て自首しろ自首。まだその方が罪も軽いだろ、ガキだし」

「……だから、帰りたければこの領域に巣くう2体のギバイバを……」

「あーうっせぇ!!何だマジでお前は!!自分の要望だけ押し付けて来やがって……。大体そのバイバとか言うやつの存在も俺は信じてねぇんだよ!」

「ならば、この家から私と共に出ましょう。そうすれば分かります」

「……くそ、わーたよ。とりあえず、だ。取り敢えず、そのバイバとやらが本当にいるのかだけ確認しといてやるよ!!」



〜5分後〜

「ばー!!おっ!お前烈白ぉ!!何だこいつ何だこいつ何だこいつ!!和製ウォーキングデッドか!?いやつーか顔面の触手めっちゃ伸びる!!禁止!それ禁止!!」

ヤバイバに響き渡る、野太い男の悲鳴。

それを冷ややかな目で傍観する幼女。

「ほらー言ったでしょ。バイバイルヨーって」

「いやまさか信じられるかぁ!!中に人入ってるだろあれっっ!!って思ったら信じられない角度に首曲がったぁ!?」

夜桜を追いかけていたバイバは首をゴムの様にねじり、そこに溜まった力を解き放つことで自らの刃に回転の力をのせ、その貫通力を高めた。

「くそっ!!おいおいおい!!烈白!!こいつ打撃は効くか!?」

「エエ、キキマスヨー。コロスコトモデキマスヨー。ソコハヒトトオナジデスヨー。……まぁ」

「よっしゃ!!」

烈白が言い終わる前に、夜桜は行動を開始した。

体の向きを180度回転。

今まで背を向けていたバイバに正面から向き合い、

地面を蹴り、突撃。

バイバが放った刃は姿勢を低くすることで危なげなくかわし、しかしスピードは落とさない。

まるで地面を蹴り、足に伝わったエネルギーが夜桜の体を駆け回り、筋肉にくという筋肉にくを刺激して、何倍もの力になって。

快感が、夜桜の体を支配していく。

「うおっしゃあぁぁぁ!!!」

猿の威嚇の様な雄叫びが、夜桜の喉から飛び出す。

バイバは今、顔面から突き出した刃を伸ばしきってしまっている。

すぐに戻す事は出来ない。

バイバの身体構造をまだあまり把握していない夜桜であったがしかし、この5分間の「鬼ごっこ」で、最低限刃の動きは頭に叩き込んでいた。

(どうやらこのバイバってやつの武器は、この刃だけみたいだな(後身体能力も高い)……)

夜桜がバイバの懐に飛び込む。

「っ!!」

このバイバの身長は、約170センチ程。

そんなバイバの懐に、姿勢を低くして185センチの巨漢が侵入。

見ているもの、誰にでもわかった。

これは、完全に夜桜釡絵の間合いだと。


拳が、骨を砕く音が響いた。

メリュベキッ!!と言う、美しさなど1ミリも持ち合わせていない激音ではあったが、その威力は十分。

夜桜の右アッパーが、バイバの顎にめり込んでいた。

「死ぬほど手間がかかりますけど…………」

消え入りそうな烈白の言葉が、戦いの決着を知らせていた。

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