桜と刀と死を呼ぶ雨

第26話

座頭と蛟が錏毘を倒した30分程後。

そこから西にかなり離れた場所に、もう1振りの日本刀があった。

座頭と蛟が初めて邂逅した家屋と全く同じ型。鏡に写したかのような家の中に、それは所有者と共にいた。

「いやさぁ……、いきなり意味のわからん場所に拉致されてさぁ……。で、バイバとか言うのと戦えだぁ……?ちょっとお前、俺の事なめすぎじゃねーか?」

「……別に、戦う事が嫌であれば、私1人でも戦う事は出来ますので、夜桜よざくらさんはそれを安全な場所から見ているだけでもよろしいのですが」

「だーから!!そう言う事じゃねーってんだろ!!それに何だ?お前が「日本刀」!?幼女の皮被った刀剣ってわけかぁ!?そんなんだれが信じるかっつーの!!あぁ!?」

「……見せましょうか?私が刀だと言う証拠を」

「ほらちょっとキレてんじゃねーか!!直ぐ証拠とか言ってる時点で俺からの信用は無くなったと思え!!」

「………」

夜桜と呼ばれた男と、グツグツと煮える囲炉裏を挟んでその前に座る少女、烈白れっぱくの間に流れる雰囲気は、決して良いものでは無かった。

(この夜桜と言う男……、久しぶりの「当たり」。これでギバイバとの戦いに決着を着ける「駒」が揃ったと思いましたのに……)

獅子の様に荒々しく逆立つ赤銅色の髪の毛、額には右目にかけて抉りとられた様な傷痕。

身長185センチ程のその体は硬く鍛え上げられ、おそらく身体能力は一流アスリートにもひけをとらないだろう。

それが、烈白の……、夜桜釡絵よざくらかまえと言う男への率直な感想であった。

(ちっ……!しかしこの女ぁ……。中々「やり手」だなぁ……。身長160行ってねぇだろうに……。なんつー「殺気」秘めてるんだか……。戦ったらただじゃすまねーなこりゃ)

そして夜桜の烈白への感想も、また同じ。

戦闘力としては、申し分ない。

おそらく蛟より細いであろうその四肢は、さらに色白。血行も良くないだろう。

目の下には真っ黒い隈、そしてボサボサの白髪。

10日は寝てないブラック企業の社員か……。現実にいれば、保護施設に連絡が言っていてもおかしくはない相貌。

それが「気殺刀きさつとう」、烈白であり。

5本の刀の中でも最強と吟われる刀剣の姿であった。


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