第16話
「ぶほっ!!」
目に入ったのは、真っ赤に燃ゆる空。
夕焼けよりよりも濃く、そしてどこか邪悪さを持った、地球に何か異常が起こっているのかと疑いそうになる空。
この空が何よりの証拠だ。
僕は、ヤバイバに戻ってきた。
おそらく今よりは平和な次の人生を捨てて、ここに戻ってきた。
胸に手を当てる、バイバに貫かれた左胸。
そこには傷と思える物は何もなく、治療した様な形跡も無い。
まるで僕が負傷したと言う事実が消し飛ばされてしまったかのような。
「座頭……さん……?」
隣を見ると、蛟さんが目を丸くしていた。
それはそうだ。
1度完全に生命活動を停止した死体が、何事も無かったの様に起き上がったのだ。
普通なら奇跡……、または火葬する前で良かった、と安堵するからな所だが……。
今は、安堵している場合では無い。
おそらくだが僕が死んだことを確認し、錏毘はどこかに行こうとしていたのだろう。
僕達に背を向け、かなり離れた所にいた。
しかし、どうやら何か異変が起こった事には気付いた様だ。
そして、自分に何か不都合な事が起こったのだとも察知したのだろう。
ゆっくりと振り返った錏毘の顔には血管の筋が浮かび上がっており、目も血走りピクピクと痙攣している。
「……おいおいおいおいおいおいおい!!!何何事も無かったかのように起き上がってんだよてめぇはぁあぁああぁあ!!!勝ち誇って気持ち良くなってた俺がバカみたいじゃねぇえぇえぇかよぉおぉぉお!!!」
「ぐっ……」
錏毘の憤怒の雄叫びが、ヤバイバを揺らす。
まるで錏毘が巨大な山になったかの様な威圧感。
「はっ……はっはっはっはぁぁぁぁ!?!?!?、もう良い、もう良いいぃわぁ!!蛟ぃ!!俺には刀を破壊する技がねぇから今までこんな回りくどい方法でお前を拘束してたが……。たった1回だぁ、1回くらいプライド捨ててあいつに頼んでぇ!!てめえを破壊してやるぅぅぅぅ!!!」
錏毘が叫ぶたびに銀髪がゆれ、肌に浮き出た血管の数は際限無く増えていく。
「俺は「
錏毘が両腕を自らの体の前で交差させる。
すると、錏毘の両腕に埋め込まれた6個の球体……、瞳が、かっと開いた。
「何が……」
僕が言葉を発する前に、それは起こった。
ヤバイバの地面、全く舗装されていない荒野の様な地面。
そこから泥水の様に、大量のバイバが現れた。
「もう1度味わえ……、バイバの山をなぁぁぁぁぁ!!!!」
その声を合図に、ヤバイバ達が一斉に行動を開始した。
統制も、陣形も無いもない。ただただ純粋な、数の暴力。
しかし、それゆえ攻撃にクセもない。見切られるパターンも無い。
味方の刃に傷つけられ、手足を失うバイバも居るだろう。
味方にぶつかり足をすくわれれば、おそらく後続のバイバに踏み潰され、息絶えるだろう。
しかしそんな恐怖心は、バイバ達には存在しない。
頭にあるのは主である錏毘の命令と……、一刻も早くこの怨嗟渦巻く体を誰か切り捨ててほしい。自由にしてほしい、それだけだった。
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