第10話

「はあっ!!」

目の前にいた最後のバイバを蛟さんが切り伏せ、僕達は何とか、バイバの山を突破することが出来た。

後ろを見ると、僕達が先程までいた家屋が大量のバイバに飲み込まれ、ベキベキと潰されて行くのが見えた。

(ひぃぃぃ……、やっぱりあそこから逃げて正解だったな……)

しかし、バイバの山を抜け、すこし緊張が緩んだのだろうか。

どっと足に疲れが現れ、僕は地面に腰を付いてしまう。

30分程、休憩したい気分だ。

しかし考えてみれば、こんな長距離を全力疾走したのはいつぶりだろうか。

いや……、いつぶりと言うよりも、初めてかもしれない。

人間、生死がかかると本当にリミッターが外れるものだなぁとしみじみ思いながら、僕は疲労仕切った足をさする。

そういえば蛟さんは大丈夫なのだろうか。

僕の前でバイバを切り続け、疲労も集中力も相当削っていたはずだ。

そうして蛟さんを見ると、

彼女の集中は、まだ切れていなかった。

現に、彼女の両腕でぎらつく2つの蛇苦蛇苦刀は、まだ鞘に収まっていない。

未だに臨戦態勢だ。

「み……、蛟さん……?」

僕がおそるおそる話かけると、蛟さんはちらりとこちらを見て、

「来ます」

と小さくそう言った。

何が来るのか、この時点で僕には皆目検討もつかなかったがしかし、それはまた、恐るべき脅威なのだろう。

蛟さんの顔は、先程バイバの山に突っ込んだ時よりおそらく緊張でひきつっていた。


ドォン!!と

地面が揺れた。

「うおっ!!」

僕は急な揺れに立ち上がろうとしていた体をすくわれ、また無様に転倒してしまう。

それとは正反対に、蛟さんは地面に根を張った様に直立不動。

まるで、何度も同じ揺れを経験しているかの様に。

この揺れを全く不意打ちと思わせない、堂々とした姿だった。





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