第7話
バイバと言う、目に見える脅威は一旦去った。
そのおかげか、僕の頭には余裕が出来始める。
「あ……、ありがとう、蛟さん……。凄いね、力……」
「ええ、まぁ……。武器として、この程度は最低限必要な実力です」
謙遜などではない。
何を当たり前の事を……。そんなニュアンスが蛟の言葉にはあった。
「しかし、さっきから「道具」だとか「武器」だとか……。君は一体、何者なんだい……」
「先程言いましたが。私は蛟。「蛇苦蛇苦刀」です」
「いや……、そうじゃなくて……」
「他に言うなれば……、この領域から、座頭さんへのプレゼント、と言った所でしょうか、私の存在は」
淡々と、蛟は続ける。
「この領域に侵入した者には……、漏れずに1つ、バイバに対抗するための武器が与えられます。最低で拳銃、最高の者で……、おそらくですが、私の様な「日本刀」辺りでしょうか」
……つまり、僕は当たりを引いたと言うことで良いのだろうか。
この領域から生還するためのマストアイテムを、手に入れた……。
やはり、僕は完全に神様に見放されたと言うわけでは無いようだ。
その事にほっと一息つきつつ、僕はさらに蛟に尋ねる。
「さっきのおじさんを見て思ったんだけど……、今このヤバイバには、僕以外にも同じ様な境遇の人がいるの?」
「はい、人数は21名。この領域には現在、座頭さんを含めてこれだけの人がいます」
20……、この領域の広さがわからないので、大きいのか少ないのかわからないが……。それでも、仲間がいるというのは心強い。
「そして私の様な「日本刀」を持つものは現在5名……。どれも相当に強力です。この領域からの生還の助けとなるでしょう」
と言うことは、おそらく少なくとも5本の蛟さんの様な刀がいると……。
そう思うと、一瞬何だ、案外簡単そうじゃん。と思ったのだが……、僕のそんな考えは、蛟さんから少し視線を横に向けた時、叩き壊された。
「おっ……、おおおお」
「おぅおぅおぅおぅ」
「いぃいいいぃぃぃいいい」
建物の影から、次々とバイバが現れていた。
先程の蛟さんの戦闘音を聞き付けたのか、それとも彼ら特有の感覚で察知したのか……。いずれにせよ、この数から逃げると言うのは、無謀だろう。
そうしている間にも、建物の影から現れるバイバは次々と増え、もはや5メートル程の高さがあった建物を覆い、そこには真っ黒いウゾウゾと小刻みに蠢く山が出来ていた。
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