第3話
少女が言うには、つまりこういう事の様だ。
僕はたまたま全日本国民の中からこの「ヤバイバ」に送り込まれる人間として選ばれ、拉致され、そして何の説明も無しに寝て(気絶させられて)いたと。
そしてこのヤバイバは、日本のどこか……、しかし、日常とは遥かにかけ離れた場所に隔離された領域らしく、こちらから助けを呼ぶことはほぼ不可能。
そして、このヤバイバに送り込まれた人間の6割が死ぬという言葉の根拠。
どうやら、この領域には、「バイバ」と呼ばれる生物がいるらしい。
その生物は、人間を殺し、この領域に血を振り撒くだけが目的の生物……。らしい。
「……そして、このヤバイバから出る方法……」
静かに青髪の少女は、淡々とした声で説明を続ける。
「このヤバイバには……、3体の「ギバイバ」と呼ばれる強力なバイバがいる……。それらを全て倒せば、ゲームクリア……。ここから出られる」
ヤバイバ、バイバ……、ふざけた名前の応酬に、僕は自分の置かれた状況が、あながち軽い物なのではないか……、そう思い、ようやく少し落ち着き始めた時、
その考えが、軽くフワフワした考えが、一瞬で吹き飛ばされた。
「ひぃぃやぁあぁ!!!」
家屋の外、姿は見えないが、だらしない男の悲鳴が、僕の耳に届いた。
地元では「地獄耳の座頭」として人の噂話に耳をたて、どんな情報でもキャッチしてきた僕だったが、そんな僕だったからか。
この声は、良い情報ではない。
ましてや目の前にあるぼろぼろの扉を開け、何が起こっているのか確認しようなど……。
ガチッ。
「!」
僕は、自分の意に反して、いつの間にか扉に手をかけていた。
「……」
少女は、そんな僕を止めようとしないし、むしろ僕の決断を待っているような気さえした。
「…………」
僕は、扉を開ける手に少し力を込め、ゆっくりと、数センチ、外が確認出来る最低限、扉を開いた。
おそらく、この扉を開いた今、僕は後戻りの出来ない状況に自分の身を置いてしまったのだろう。
僕は別世界への扉を、開けてしまった。
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