第7夜え?仕事じゃない、だと?


「これから何するんですか」



気になった私が千華姐さまに聞いた。



「そうね。箏の稽古よ」

「箏?」



箏、とは“そう”と読む。要はお琴のことだ。


え、仕事じゃないの?



「え、でもさっき、お前さんらの仕事だよって」

「お前さんたちは、勉強することも仕事だろう」

「うっ」



そういう意味か!



「道中じゃない日は、お稽古をするんだよ」



花蓮が箏の準備をしながら言う。



「へぇ〜…道中って何?」

「花魁道中のことよ。要は私たちが着飾って歩くだけの話」



歩くだけなんだ。



「千華姐さま、変な言い方しないでください」

「あら、でも事実でしょう?」

「もう」

「ふふっ」



ん?歩くだけじゃないの?



「さ、それは置いといて、稽古を始めるよ」

「「はい」」

「今まで私一人だったから、来夏ちゃんが来てくれて本当に嬉しいな」



ふにゃりと笑う花蓮。


うわっ、可愛い!!



「花蓮、それは反則だ」

「?」

「あぁ、何でもないよ」



元から器量良しの子なんだから、当たり前だけど…可愛すぎる。



パンパンッ


「ほら、稽古を始めるよ。花蓮、まずは基本を来夏に教えてやりなさい」

「はーい。来夏ちゃん、まずはね…」






「あぁ〜…死ぬ〜…手がもげる〜…」

「来夏ちゃん、頑張って!」

「この型無理ぃ〜」



やばいやばい。手というか、指がもげる。



「…そろそろ見世の時間だね。今日はこれくらいにしておこうか」

「ふへぇ」

「お疲れ様、来夏ちゃん」



花蓮が頭を撫でてくれる。


私、花蓮の撫でる手つき、好きですわ。



「さ、箏を片付けて。今日は初めてだからね、来夏、花蓮の動作をよくみるんだよ」

「はい!」






服を脱がせて、着せて、帯しめて。


うーん、思ったよりもやることがたくさん。


オボエラレルカナー?



「それで、ここしめて完成だよ」

「おぉ〜!お見事」

「ありがと。千華姐さま、できました」

「ありがとう。花蓮。さ、二人は夕凪たちと合流なさい」

「はい」


そのあと、片付けやらなんやらをして


「「ありがとうございました!」」


と言って部屋を後にした。










「あ、夕凪〜、夕弦〜」

「「来夏、花蓮」」

「二人もお疲れ様。今からご飯?」

「あぁ。花蓮たちも?」

「そだよ」



食堂?に向かう途中の廊下で、夕凪たちと会った。


二人はなんか……和の作業着的なやつだね。

正式名称知らんけど。


いいなぁ、動きやすそ。



「花蓮は何にすんだ?」

「私はいつも通りお新香とお味噌汁。夕弦は?」

「俺は魚〜」

「はいるの?」



花蓮と夕弦は仲がいいのね。微笑ましいわ。



「…来夏は何にするの?」

「…ここって何があるの?」

「あ」



忘れてたよ。私昨日は、おやじどのがおにぎり持ってきてくれたから、食堂?には行ってないんだよ。



「…お味噌汁、お新香、魚とかがある。俺たちはまだ一人前は食べきれないから、半分の量になるけど。美味しいぞ」

「そうなんだぁ…お腹減った」



早く、早く食堂へ着け。




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主人公が転生者。悪役の私も転生者。 ひかげ @0208hina

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