第3夜禿っ子になりました


「と、言うわけで、今日からウチ、秋風妓楼の禿かむろになった“来夏らいか”だ。仲良くするように。年長組は妓楼のあれこれを教えてやってくれ。来夏」

「よ、よろしく…おねがいします」



うわぁ、みんな見てるぅ………。























「ふぅ、これでゆっくり話ができるな」

「飴玉、置いときますね」



私や秋華さん、凛さんは吉原?の中にある妓楼、秋風妓楼にある秋華さんの部屋に来ていた。


行灯と机が置いてあって、あとは仕切りが一つと座布団があるだけ。


質素な部屋だ。


というか凛さん何気に、私には飴玉さへあれば大丈夫とか思っているでしょ。その通りだけど。



「まず、お前さん、本当に歳も名前もわからないんだな?」

「わかりません」



プルプルと痺れる足をなんとか我慢して、正座をしている私。


早く話を終わらせてくれ。本当に。



「ふむ…凛、器量は良しだな?」

「はい。この子なら、引込みになれると思います」

「そうか………まずは名前を決めないとな」

「なまえ?」

「あぁ、いつまで経っても名無しじゃあ困るだろう?」



うーん、それもそうか。というか引込みって何。



「今はー……水無月の終わりだな。よし、お前の名前は今日から“らいか”だ」

「らいか?」

「来る夏、と書いて来夏。もうそろそろ夏が来るからな、丁度いいだろう」



えー、何その適当感…でも、そっか、来夏か

来夏、来夏、来夏…うん、響きは結構好きだな



ん?来夏?来る夏?



【お前なんて、来なければ良かった!!】



んん?



【お前が来なければ、お前さへ来なければ、私は幸せでいられたのに!!】



んー、大事なことを忘れているよう、な?


この世界は、確かゲームの世界。


大人気乙女ゲーム、繰り返す夜を共に〜鼈甲の簪と鈴の音〜の、世界。


そこは、遊女遊男がいて、商売をしている。


秋風妓楼。高級妓楼で、見目麗しい男女がたくさんいる。



そこの、一人の花魁の名前は



「来夏…」

「おう、そうだ。気に入ったか?」

「え、あ、は、はい!すごく!」

「そりゃあ良かった」



秋華さんが微笑む。


…とりあえずはまぁ、いい、か。


とにかく、私はここで生きていくことになりそうだ。



「あらためまして、来夏です。これからよろしくおねがいします」

「あらまぁ、ご挨拶ができるなんて、とても良い子ね」

「こりゃ良い奴を拾ったもんだ」



ただ頭を下げただけだが、褒められるのは良い気分だ。


とりあえず、私は



「わたしは、あめだまさへもらえれば、それでいいので」

「「……」」



あの飴玉むっちゃ美味しかったんだもん。

しゃーなし。



「ま、まぁ、改めて。よろしくな、来夏」

「凛と申します。よろしくお願いいたしますね」

「とにかく、みんなに紹介しないとな。広間に集めてくれ」

「わかりました」



そして冒頭へ戻る。

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