第2夜私を抜きに話をしないで


「………」


サァァァァッ


「っ………」



ここは…?



「みちの、はじっこ?」



にある木陰…かな?



「おおきなもん…」



というか



「したったらずゅっ!いったぁ…」



思い切り噛んだ…舌が痛い!



「ーー…だな、あぁ、そうして」

「こちらは…はい、とても良いですよ」

「!?」



誰か来る!


か、隠れようかな、そのままここにいようかな。どうしよう…。



「ん?あれは…」

「子供?ですかね?」



あ、オワタ。これ気付かれたわ、あはは。



「おなごか?」

「多分…」


ザッザッザッ



ひぃぃ!来ないでぇぇぇ!!



ぽんっ


「ひっ」

「あ、だ、大丈夫だ。俺は怖いもんじゃねぇ、な?ほら、何もしないさ」



つか誰だよぉぉ…!!



「だれ、ですかぁ…!」

「え、あ、お、俺は秋華しゅうかだ。そこの吉原で楼主をしてる…って言ってもわからんか」



………………ん?“楼主の秋華”?



《本当の地獄よりも地獄だからね》



「っ〜〜〜〜!ふぇっ」

「お、おい、嘘だろ」

「…はっ!秋華さん!」



何でそっちの人は放心してたんだよ!


あぁ〜うぅ〜!!頭がパンクしそう!



「ふぇ…うぁぁぁぁぁ…!!!」

「な、泣くな泣くな、ほら、飴玉やるから、な?」



そんなんで釣られるかよ



パクっ


「……(もぐもぐ)」

「「ふぅ…」」



というか忘れてたけど、あなた秋華さんとおっしゃいましたね、あら偶然。


繰り返す夜を共に〜鼈甲の簪と鈴の音〜にも同じ名前の楼主さんが出てくるのです。


あ、言い忘れてましたねぇ、この乙女ゲームは吉原、しかも遊女と遊男がいる世界が舞台なのです。



イヤァ、アハハ、スッゴイグウゼンデスネー



「ろーしゅ…」

「お、喋れるか?」

「しゅーかさん、ろーしゅ?」

「おう、そうだ。お前さん、頭いいな。何歳だ?」



何、歳?


え、わた、私…何歳?え、マジで何歳なの?



「わか、り、ません」

「そうか、おっかさんやおっとさんは?」

「いません」

「秋華さん、この子…」



何だその、哀れむような目は。

悲しくなってくるからやめろよ。



「捨て子だな。おい、空、ちょっと中に入って女衒呼んで来い」

「いや、俺も一応女衒なんだけど…」

「いいから。お前より目はいいさ」

「酷っ」






「はいはい、何用ですか、おやじさま」



わぁ、綺麗な女の人…。



「凛、こいつ、どうだ?」



凛さん、っていうのね。色白で綺麗な黒髪で青と白の着物がよく似合ってる!



「捨て子ですか?」

「わからん」



おい、秋華さんや、さっきあなたは私のことを「捨て子だな」とか言ってたじゃないですか。

…まぁいいや。



「あなた、お名前は?」

「?…しりません」

「そう………器量は文句無しね。汚れてるけど、磨けば光ると思いますよ。おやじさま」

「そうか、ありがとな、凛」



ねぇ待ってー、なんか話がスピーディーに進んでってるよー?当人の私はー?



「話…を、しようにもそろそろ日が暮れる。凛、こいつ、お前が連れてきたことにしてくれるか?」

「良いですけど…ご飯」

「大盛りだな。わかってる」

「なら良いですわ。さ、こっちへいらっしゃい」



え、え、えぇ〜。私ついてくしか無いじゃん



「…」

「ほれ、飴玉」

「いきます」

「おやじさま…」

「引いた目で見るな」



こうして私は飴玉に釣られ、一歩入ったら抜け出せない、魅惑の吉原に足を踏み入れたのだった。



器量良しって美人さんってことよね?

うっそ、私美人さん!?しゃあっ!

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