そして…エイナはもぐりたい。

ちょこちょこと小さな魔物に遭遇しながらも無事に街に辿り着き、

リアは癒やしを求めて厩舎に。

シュミカも後に晩餐の下見に出かけるので、まずはリアに同行して行った。


俺とエイナは…約束であるのでギルドでの半日程度で終わりそうなクエストを探している最中である。


もちろん俺はどれを見ようが読むことが出来ないので、お昼休みで昼食も済ませ、

暇そうにしていた受付のお姉さんに説明をお願いしている。


俺自信…一応毎日ギリアさんに教わったトレーニングを続けてはいるが…

所詮数日の付け焼き刃。

ささやかな筋肉痛の心地よさに浸っている程度なので、

エイナが喜びそうなモノなんて想像も出来ない…。


受付嬢「う~ん…近場でアナタに出来そうなものとなると…、

    やっぱり、張り出される様なものより、

    デイリーの食材収集などが安全でいいんじゃないんでしょうか?」


…本当に…悪意無く人の心にチクチクとダメージを与えて来る人だなぁ…。

…だが、それがいい…♪


受付嬢「後は…そうですね、ここの近くにあるのは…

    あまり深い階層に潜ってしまうと危険ですけど

    やはりエレメンタルダンジョンとかがお手軽でいいんじゃないですか?」


エレメンタルダンジョン。


各地に存在する、例の精霊さん達の暇つぶしの産物である。

初級から、下層にまで挑戦する上級者まで様々なニーズに答える各地に存在するスポットで有るのだが…それすらにも手を出す事を躊躇って来た俺達のランクがどれだけ低いのか…それを持って理解していただけると思う。

しかしエイナくらいの人材がいるのであれば…少し見学もしてみたい。


俺「なぁエイナ、とりあえずこんな感じでどうかな…?

  すぐに戻れるし…。」


と目を向けると…他の受付の方々に…

「お嬢ちゃん…半日で魔王はダメよ…。」と、

たしなめられていた…


半日とかじゃない!

まずお嬢ちゃんに魔王がダメだ!!


エイナ「ねー、アサヒ~…ボク、魔王いけると思うのさぁ…。」


血走った目が怖い!


俺「わかったわかった!

  な、とりあえずダンジョン有るらしいから行ってみよう!

  

  …俺が死なない程度までは付き合うからさ…。」


するとキラっとコチラを見るエイナ…。


エイナ「大丈夫だよ、アサヒ!。

    アサヒくらいの足手まといが居た方が楽しいんだよ~♪」


くるくる回って楽しそうだが…


ヒドイ!!


受付所「ちょっと待ってください、アサヒさん…。

    ダンジョンにこんな小さな女の子連れ込んでナニを考えてるんです…?」


言い方!


俺「いやいや…、この子はホラ…。」


と、エイナのスカートを掴むと…

    

エイナ「ぴぃっ!

    …やめてよアサヒ…!」


全力でスカートを押さえる…


受付嬢「…あ、アサヒさん…お…女の子に…何を…。

    通報してその子保護しますよ!」


俺「男の子!この子男の子だし!

  しかもでかい竜一撃で倒せるし!」


受付嬢「そんな訳無いでしょう!

    お嬢ちゃん、こんな奴と一緒に居ちゃダメよ!」


危険だ!

エイナは確実にシュミカの影響を受け始めている!

良くないぞコレは!!


俺「ちょ…エイナ…コレじゃダンジョン行けないぞ…?」


ハッと、ようやく事に気づいたエイナは

慌てて受付のお姉さんの手を取ってスカートの中に引き入れる。


…とんでもなく異常な光景が…。


受付嬢「…あら……ホント☆

    …可愛らしいわね♪」


エイナ「ちょぉ…!

    たぷたぷするのはダメなんだよぉ!ね、アサヒ!」


もう…何を言っても無理かも知れない…。

 

俺「ね…男の子…だったでしょ?」


たぷたぷするって…なによ…?…と言いたそうなお姉さんの目はもう見れません!


受付嬢「…もう…あなた…どれだけ業が深いんですか…?」


そうなりますよね!?


俺「いやいや!

  この子の欲求不満解消が目的なんですよ!」


受付嬢「事案発生!

    すぐに通報してくださーい!!」


俺「いやいやいや!

  間違えました!呼ばないで!

  エイナ!

  話が進まんから何とかして!ダンジョン行きたいんだろ?」


エイナ「ん~…お姉ちゃんたち、冗談だよ~。

    ボクなら本当に大丈夫なんだよ~!」


そこでふと思い出した!

あの国のストリーキング、

いや、王様から預かった手形…。


腰の道具袋から取り出してそれを見せてみると…。


受付嬢「…あら!

    へぇ……そういう事でしたら…。

    

    ん~…ほんとに特別ですよ…、許可しましょう…。」


…何を理解して許可してくれたのかは謎だが…。

割と凄い物なのかな?コレ…。


受付嬢「では一応説明を。」


と、始まった説明を簡単にすると…。


・深く潜るに連れて敵は強くなる。

・倒した敵が落とす物、それ自体が報酬となる。

・深い階層に行けばそれだけ貴重なアイテムと危険が増す。

・各階層に入手したアイテムを受付に送る場所があるので、出来れば小まめに利用すること。

・三階層ごとに中ボスのような存在がいて、その直前に必ずゲートが有るので無理をせずにヤバイと想ったら必ず戻ること。

・十階層ごとに大ボス的な存在が待ち構えている。

・精霊の遊びなので、敵は撃破されても時間経過で復活する。

・冒険者は途中で負けたらもちろん死ぬ。

 及びその責任は当ギルドが負うことは無い。…との事だ。


エイナ「ねー、お姉ちゃん!

    ここはどれくらいの深さまであるのかなっ!かなっ?」


嬉しそうにぴょんぴょん跳ねながらお姉さんに聞いているのだが…

超怖くなってきた!


受付嬢「さあ…各地のダンジョンでも最下層に

    到達したなんて事例はないから…。

    ただ、ここでの記録は二十三回層。

    そこから送られて来たアイテムは保管したままよ。」


俺「…したままですか。」


受付嬢「そうです、したままです♪」


…帰って来なかったという事だな。


受付嬢「ちなみにそのパーティのメモが

    二十一階層まで送られて来ていたんです。

    それらをまとめた当ギルド限定の

    『攻略のしおり』を販売しておりますが♪」


俺「一部ください!」


エイナ「楽しそう!

    行けるところまでいくんだよ~♪」   

    

いやいや…


俺「エイナ…忘れてるだろうが、

  ウチの怖いお姉ちゃんたちは今、

  今夜の宴を楽しみにしているはずだよ…。

  今日の所は夕方には戻れる所までにしておこう!」


エイナ「え~…?

    ん~、でもそうだね。

    急げばいいだけだもんね♪

    

    よっし!

    潜るよ~♪」





…そして…、

不安いっぱいな俺は有り金をはたき、可能な限りの装備を整えて、

まるでアミューズメント施設の入り口のようなダンジョンの入口に立っている。


…やべぇ…せめてこの後の飲み代くらい稼がないと…

無事に戻って来れてもあの二人に殺される…。


    


    

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