【002】流星[Return&Side]
気付けば、随分と経っていたものだ
そう――立ち止まったまま
本来ならば積もり続けていたはずの
貴方との時間は
もう、記憶には薄い
決意故か
臆病なはずのわたしが
ひとり夜道を歩いている
わたしはもう
立ち止まったままでは
いられないから
ここは何も無い町
貴方と暮らした、ただそれだけの町
街灯すら
夜に歩く人など滅多にいない
記憶は積もらなかった
貴方の無邪気な笑顔
そう最初に見せてくれた、あの笑顔
それから、先刻の寂しそうな――
それだけがはっきり刻まれている
『ざわっ』
晩春の風が、若葉を茂らせた木々を揺らす
臆病なはずのわたし
不思議と今は
その音に過剰に反応する事はなかった
それでも、
「――あ」
瞬時夜空を走ったのは流星か
ここは街灯も走る車も疎ら
故に、見られた光景があった
さよなら、この町から
さよなら、貴方から
わたしはもう
立ち止まったままでは
いられないから
気付けば、随分と一緒だったね
記憶は疎らなのに
夜道が怖いわけでもないのに――
駅のホームで泣いた
もう二度とここに
降り立つことはないだろう
そう――歩き出すんだ、やっと
new work 2019/04/20
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