第31話 自分ごととして考え、自分ごととして行動すると、成功できる

 愛子さんが挙手して、話し始める。

「話の内容は、未熟な私なんかでも納得するほど分かりやすく、亮さんの提案・改革を全面的に支持します。ただ、一つだけ質問があります。視察・取材・講演の依頼者への説明会についてです。なぜ火曜日だけで、火曜日だけで十分なのでしょうか? もし依頼者が、火曜日は都合悪いから、他の曜日に説明しろとか、無料で説明しろとか、店に来て文句を言われたら、私たちはどう対応すればよいのでしょうか?」


「愛子さん、私の改革案を全面的に支持してくれて、ありがとう。説明会が火曜日だけの理由は、火曜日は由美と香織さんがサブで入るシフトの日です。依頼者が少ない日は、依頼者を1階に集めて、説明者は私だけでいい。しかし、依頼者が多く集まった場合は、1階に収容できない依頼者は2階にも誘導して、2階では由美と香織さんに説明してもらいます。だから、よほど依頼者が多くなり限り、火曜日だけで十分に対応できます。そして、依頼者があまり多く集まりすぎない布石の政策として、説明会は一人1000円の有料制にしています。

 愛子さんが、文句を言われたらどうすればいいか、と聞かれて大切な話を思い出しました。経営者である私たちは、嫌われる勇気をもつ、必要があります。店や企業が目的を達成するために政策を絞って実践すると、その政策は不満だというクレームや、俺には特別な対応をしろというクレームが必ず来ます。そのような無理筋なクレームは、店との関係が薄い初見客や取材・視察の依頼者ほど気安く要求します。先ほどの私の改革策は、この例のような、店との関係が薄い初見客や取材・視察の依頼者からの無理筋なクレームには、対応しない、という意味です。だから、他の曜日に説明しろとか、無料で説明しろという無理筋なクレームを受けたら、このような理念・政策になっていますと、経営者として説明してください。今日、私が提示する改革策の全ては根本に、ここにいる7人の経営者が全員、経営者として自分ごととして考え、経営者として自分ごとして行動しよう、という前提に基づいています」


 私は説明を終えて、質問者の愛子さんを見つめる。愛子さんは次のように話しだす。


「私の質問は、私に経営者としての自覚が足りないことを露呈してしまいました。ごめんなさい。今まで私、心のどこかで、経営者は亮さん、私は社員だから、難しいことや面倒なことは亮さん、お願いしますって甘えがあったかもしれない。本当に、ごめんなさい。今日、亮さんの話を聞いて私、目が覚めた感じです。私これからは、もっと経営者らしく考えます、経営者らしく行動します」


「愛子さん、ご質問への私からの回答は少し厳しい口調だったかもしれない。ごめんなさい。でも、愛子さんから経営者らしい素晴らしい言葉を聞くことができて、私は今、猛烈に感動しています。なぜなら、今日の会議で私が本当の目的とするのは、皆さんに経営者らしく考えて、経営者らしく行動してほしい、というところにあります。そんな中、愛子さんは会議の序盤で早くも、私の目的を感じとって、明快な言葉で言語化してくれた。愛子さん、本当にありがとう。他に質問がなければ、店との関係が濃い常連客との対応は、まさに皆さん一人一人が経営者らしく考え、経営者らしく行動しよう、という話に移ります。宜しいですか?」

 

 清美さんが周囲の様子を見ながら「あのー」と言う。私は清美さんへ発言を促す。

「私も懺悔して、これからは経営者らしく考えて、経営者らしく行動する、と意思表明します。実は私もこれまで、愛子と同じように、甘い考えでいました。私は形式的に経営者だけど、気持ち的には社員にすぎない。だから、難しい仕事や面倒な仕事は、代表の亮さんが一人でこなして当たり前って、甘えがありました。私たちに、このような経営者として失格な甘えがあるから、亮さんに難しい仕事や面倒な仕事を抱え込ませてしまった。ごめんなさい。今日から経営者らしく考えて、経営者らしく行動したいです。その考え方を、店との関係が濃い常連客との対応を例に教えてください」


 清美さんが話し終えると、洋子さんと雅恵さんがほぼ同時に「私も同じです。今日から経営者らしく考えて、経営者らしく行動したいです」と言ってくれた。

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