第2話 始動

第2話 始動 上


翌日、再び会議室に集められたリエルとノラのメンバー達。

アクトが机一面に地図のような物を映し出すと、会議が始まった。



「この前は派手に動きすぎたから、今度は偵察を行う。

情報を得られそうなものは、持って帰ってきて欲しいが…機械類は探知機が仕込まれている恐れがあるから絶対に触るな。


怪しい機械があったら、紙媒体の資料の奪取と写真撮影を頼む。」



前置きとしてアクトは、そう話すと指揮棒を伸ばして先端で地図を指していく。

今回向かう場所は奪われてしまったかつての人間の居住区の一つ。



向かうメンバーは、アクト、ベル、B.K、アンナで後は休みと警備を兼ねた留守番。



「いつも通りだ、ベルのゴーレムで近くまで向かい…そこからは俺とアンナで内部に侵入。


B.Kは何かあった時の為に、いつでも狙撃できるように高台で待機。

ベルは、ゴーレムで表側の情報収集とB.Kの護衛。


大きな心配はしていないが…他の皆はリエルの事を頼む。」



あとは…とアクトが言葉を紡ごうとしたら、リエルは大きく手を挙げた。

予想外の行動にぱちくりと、目を見開いたがすぐに表情を戻してアクトは話を聞く姿勢になる。



「どうした、リエル。」



アクトは、優しいトーンでそう言ったが全員がこちらを注目していると出そうとしている声が引っ込みそうだ。

ごくっと喉を鳴らし覚悟を固めて口を大きく開く。




「…私も連れていってほしい。」


「理由は?」



周りがざわつく中、アクトはシンプルにそう聞いた。

アンナが止めるべきだと抗議しようとしたが、アクトは無言で視線だけをアンナに送り静止を促す。



「私は、この組織についても今の世界についても何も知らない。

うまく言葉にできないけど…いかなくちゃいけないと思った。」



「何も今じゃなくてもいいじゃありませんか。

偵察は今回に限った話じゃありませんし、訓練をしっかり行った後でも…。」



アンナ。

アクトはそう一言だけ会議室に響かせてアンナの言葉を止める。


ふぅ…と大きく息を吐きだして、少し間を置く。



「リエルも訓練した方がいいのを重々承知の上での発言だ、それを訓練してからといって後回しにするのはいけないだろう。


しかし戦闘を避けた偵察とはいえ危険な事には変わりない、それはリエルもしっかりと理解しているか?

リエル、お前の行動や失敗が自分や仲間、ここにいる非戦闘員の人達も危険にさらすことになる。」




アクトはそういうと、椅子から立ち上がり皆に背を向けて会議室の扉をあける。



「本当に覚悟があるなら訓練室に着いてこい。

付け焼刃くらいにしかならないが、必要最低限行動ができる位の訓練をしてやる。


訓練についてこれたら連れて行ってやるが、無理だったら今回は諦めてもらう。

リエルもアンナもこれでいいな?


後は他に何かあるか?」




意見や要望が帰ってこないのを確認するとアイクは会議室を出ていく。

リエルも直ぐに後を追うように駆け足で会議室を出ていった。


アンナはそんな2人の様子をソワソワとしているのを見かねたB.Kがゴシゴシと頭を掻いた後にアンナの手を引く。



「気になるならついていけばいい。

怪我が一番の心配なら尚更だ、お前のキーウエポンは壊すことしかできないのか?」


「いいえ、違いますわ。

ありがとうございます、行きましょうB.K様!」



B.Kの言葉を聞いたアンナはハッとした表情になり今度はB.Kを引っ張るように前にでて会議室を出て行った。

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