第1話 ノラ 下

人々を守るノラの拠点とはいえ、そんなに広くはない。

先程使った会議室とキーウエポンが収納、点検を行っている整備工場と訓練室とノラの居住区がチラホラ。


リエル達は、部屋が用意されるまではシェアルームみたいな所で過ごしてもらっていた。




「そういえば、部屋を用意しているのは誰ですか?」


「僕に敬語はいらないよ。

今、そう言うのを使ってるのはベル。


君達を助けるときに見たあのゴーレム達を覚えている?

アレの応用で部屋を作っているんだ。


勿論、プライバシーはバッチリ。」




リエルの質問に親指をグッと上に上げて答えるシオ。

アンナもリエルの両肩に両手を置いて微笑んでいる。



「皆様は、節度がある人達ばかりなのでプライバシーは安心してください。

…万が一、違和感を感じたらワタクシにお知らせください、なんとかいたします。」



ウフフフと優しく微笑むアンナ。

会議室での圧を思い出し、具体的に何をするのかリエルは怖くて聞けなかった。


思考を殺し、はいと元気よく返事する。

イヤーイイヒトダナーと考えを切り替えていると整備工場の入り口に着いた。



窓はなく、扉の上にランプが付いていた。

中に人がいたらランプが光るらしい。



そして今、光っているから誰かいるのだろう。



「今、アイク様がいらっしゃるようですわね。

ワタクシ達の持つ武器はアイク様にしか作れず、精密な検査かできないのです。


大体、アイク様は此方にいらっしゃるのでご用事があれば先ずは此方をお尋ねください。」




扉を開けることなく次へ進む3人。

リエルは久しぶりに学生の頃にやったような工場見学をした気持ちになった。



そして訓練室。

そこには、サイとエグザスが組み手をしていた。


訓練は何も、キーウエポンを使って行うばかりではない。

竹刀や木刀、防具、柔道でやるような畳やマットなど学校の体育館のような感じで備品のラインナップが揃っていた。


体術に特化した2人が今日やっているのは、総合格闘技のようで汗をかきながら不規則にパンチやキック…投げ技などをしようとしている。



「体術に長けたお二人の組み手はいつ見ても、見応えがありますわ。

勿論、体術だけじゃなくて此方もございます。」



アンナが指さした方向には、座禅用と更に限られた部屋があった。


キーウエポンと使い手には適合率があり、1%でもないとアイクの作った薬が大丈夫でも扱う事ができない。

適合率の上昇は未だに定かではないが、強く感情が露わになった時や熟練度がそうなのではと言われている。



適合率が上がると、使える技の種類や威力が上がるなどとわかりやすいものだった。



「一応、ノラの管理する施設はこんな感じかな…人類存亡を左右する砦の1つだけど、そんなにピリピリしていないでしょ?


改めてようこそ、僕たちの家へ。」



シオは腕を後ろに組んで歯を出すような笑みを浮かべてそういった。





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