狂信という名の呪いである。
はるまるーん
蝿も、金魚も、さながら馬鹿だよなあ。
黄土色の教室。外は厚い厚い雲が所狭しとグレーを覆っている。
ぶよぶよとした空気の前には、目の死んだ教師が一人だ。突っ立っている。
何かを話している。目は死んでいる。
誰一人顔を上げない、僕もだ。
ぶーーーーーーーーん。
ああうるさいな、と僕の横に止まっていた蝿をバン、と潰した。
手を離すと、
蝿は金魚だった。
むくむくと赤が膨れ上がり、僕たちを潰しあっていく。
机はメキメキと音を立て、プチ、という音が徐々に液体を帯びる。
僕の心は動かない。内臓が飛び散る。
金魚が人類の目をつける。ぐりん、と回す。
オディロン・ルドン「眼=気球」さながらだった。
口も人である。
「わあ、お前らには何の価値もないね」と嘯く。
唾が飛ぶ。
唾が顔にかかったので、僕は反論をしようとした。
でも、生憎脳みそが潰されてしまったので、僕は口を噤。
だってそこに広がるのは、僕たちの考えられない頭だけだったから。
ビチビチと跳ねる。僕はなあんにもできないんだな。
金魚は、でかいあかんべえをして、消えた。
僕たちの内臓はみるみる戻っていった。
皆変わらず同じように。
何もなかったように、僕は、蝿を、
何だ、蝿は僕の手の中にいたのか。
「えー、ということで選挙権は十八歳からですが、
***の君たちには何の関係もありませんね」
ぶーーーーーーーーん。
手にこびり付いた蝿だったものを振り落とす。
ぼとり。
僕はこのまま権利をもらって、適当に生きて、適度な人生を。
ね、ほんとだね。
馬鹿だけにはなりたくないなあ。
僕は机に突っ伏し、厚い厚い雲を瞳孔に反射させ、そのまま閉じた。
狂信という名の呪いである。 はるまるーん @harumaroon
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