うしろむきにあるく人物
僕の住んでいた地域での話です。
僕が高校生のころ、こんな都市伝説が噂されていました。
後ろ向きにに歩く男が出る。
道を一人で歩いていると、前の方から後ろ向きに歩く男が近づいてくる。
すれ違い、ふり返ってその男の顔を見ると死ぬ。
よくある都市伝説一つだと思っていた。
前方の、後ろ向きに歩く男に気付くまでは。
一人で帰っていたその日、住宅街の間を歩いていた。
ふと、足元から前の方へ目線を上げると、前の方から後ろ向きに歩いてくる男がいた。
都市伝説のことは知っていた。
なので、その時は恐れより好奇心が勝っていた。
実際思っていたのは、この人が都市伝説のもとになったんだろうな、ということだった。
後ろ向きに歩く男は道の左側を歩いている。僕は右側に避けて止まった。
男は歩き、僕は動かない。
数秒後、僕らはすれ違った。そして、遠のく足音。
ふり返って、見るか見ないか。僕は・・・
ふり返りませんでした。
都市伝説に少し恐れがあったようで、ふり返ることはしませんでした。
代わりに、持っていたスマホで自分とその後ろを撮影していました。
これならふり返ったことにはならないだろう、と考えて。
撮影された写真にはこちらを見ながら笑っている父が写っていました。
思わずふり返ろうとしたその瞬間、背筋に震えが走り、思いとどまりました。
そのあとも、ふり返ることなく帰りました。
家に帰ったあと、迷わず押入れのおばあちゃんのところに行き、見てきたことを話ししました。
押入れのおばあちゃんは最後まで話を聞いてくれました。
押入れのおばあちゃんが言うには、その写真はあるのか、と。
僕はスマホを操作して、あのとき撮った写真を探しました。
しかし、その写真はありませんでした。
押入れのおばあちゃんが続けて言うには、そんなこともある。気にしすぎたら、よけいあかん。
僕は忘れることにしました。
たぶん、押入れのおばあちゃんもそうやって不思議や不合理を受け入れてきたのだろうと考えながら。
数年後、父と酒を飲んでいた時にこの時の話をしたことがある。
状況もそのまま、話ししました。
しかし、父は何のことか分からないようでした。
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