くるまについた手形

僕が通勤で車を使うようになって2年ほどたったころ、土曜日に出勤した。

その仕事を片付けて昼頃に家に帰ろうとしたときの話。


運転しているときに屋根からコツコツと音がしてきた。

雹が当たったかのような、小さな堅いものがいくつも落ちてきたような、そんな音だった。

その時は何だろうと思いながら運転を続けていた。

不思議と、車が動いているときにだけ音がして、信号で止まっているときには音がしなかった。

途中でコンビニに寄って、屋根を確認しても何もなかった。


家についたら珍しく、家族が誰もいなかった。

夕方ごろに家族が帰ってきたときに、押し入れのおばあちゃんから話しかけられた。


押入れのおばあちゃんが言うには、車えらいことなってるで。洗ってきいや。とのこと。


外に出て、車を確認してみると、驚いた。

屋根にいくつもの手形がついていた。

しかも、なかなかの大きさだった。僕の手のひらから2センチは大きいサイズだった。

興味本位で自分の手のひらと手形を合わせてみようと近づけたとき、ずうんと嫌な感じがしてやめた。


そのあとすぐに、ガソリンスタンドに走り、洗車した。

その後、何事もなかったが、今でもあの手形は何だったのだろうと考えるときがある。

押入れのおばあちゃんに聞いとけばよかったと少しの後悔と一緒に。

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