【3】赤い珠の存在

 アルフレッドをとどこおりなく俺とライとで案内し、最後に大神官執務室へと案内するところで、ちょっとした事件が起きた。


 たまたま通りかかった花壇の横にいたエレナに、俺が思わず声を掛けてしまったところから、 “それ” は始まった。それは、こんな感じだ。


「あ!エレナじゃん。お前、さっきはどうしたんだよ?あれ…さっきって…なんだっけかな」


「はぁ!?またリヒトが変なこと言ってるし。朝のこと、まだ言ってんの?しつこいやつ」


「違う違う。ほら、なんだっけ…あ!髪飾り落としただろう?ライからもらった白いやつ」


 なぜその時まで忘れていたのか分からないが、俺はポケットの中から多少潰れてしまった髪飾りを取り出し、エレナに渡すと


「え…?本当だわ!全然気づかなかった!どこで拾ったの?」


と、エレナが自分の頭を触り、この時点でようやく髪飾りが頭から外れていたことに気づいたようだ。


しかし、問題はここではなく、この後の会話によってちょっとした事件は、大ごとへと加速することになる。


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「なん…だ…?その赤いたまって」


 ライが血相を変えて俺の肩を掴み、揺すり始めたのは、俺が頭の中に円形堂を思い浮かべたところからであった。それで終われば良かったのに、俺は龍珠のことも口に出しそうになり、思わず口をつぐんだときに、うっかりライに心を読まれてしまったのだ。


「へ?なんのこと?」


と、誤魔化してみても、ライの読心術はたった1日で驚くべき進化をげていた。


「リヒトが何かずっと隠してるなとは思ってたけど、それはなんだ?もしかして、リヒトが掃除してる場所に関係するもの?そうだよね!?」


「あ、いや…これは…まぁ、そうなんだけど。誰にも言ってはいけないって、大神官様から止められてるし、知らないのもライだけじゃないよ。ここにいるほぼ全員が知らないはず」


「この大神殿内にそんな像があったことも知らなかった。それに、その赤い珠…なんだか…龍の瞳のようじゃないか」


 ライがいきなり突拍子とっぴょうしもないことを言い出した途端、エレナが酷く恐ろしい叫び声を上げ始めた。取り押さえても叫び声を上げたまま、我を失ったようになったエレナを何とか落ち着かせようとしたが、どんな方法も功を奏さず、最終的には意識を失わせる他なかった。


 この事件をきっかけに、龍珠の存在が明らかになり、その結果引き起こされる事件が起きるのは、夜も明けきらないほんの半日後のことであった。


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