ロリポップ

結城 佐和

ロリポップ

 あめが降っていた――。

 吹き抜けになった一階から、二階の欄干越しに子供たちの姿が見える。

 子供は双子の女の子で、姉の方がペコちゃんが描かれたお菓子の袋を持ち、肘をあげ、頬を膨らませ、袋を開こうと躍起になっている。しっかり握っていたはずの手が滑って袋が落ちる。

 袋を開けようとするも何度も滑って落とす姉が可笑しかったのか、キャッキャと笑っている。

 姉の方も妹につられ笑い出す。

 その光景が微笑ましく、私は雨の日も悪くないと思った。

 コーヒーを入れようとソファを立ち、はしゃぐ子供たちの下を通って台所へ向かう。ちょうどその下に差し掛かった時、バンと爆ぜる音と共に、あっ、という子供たちの声が聞こえ、どうしたのかと上を向く。

 ――アメが降っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ロリポップ 結城 佐和 @yuki_sawa

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る