愛しいあなたへ

拝啓

愛しいあなたへ。私の大好きなあなたへ。

あなたが死んでからもう何年でしょうか。私は元気です。

毎日毎日、施設の皆と仲良くさせてもらっています。あなたが死んで直ぐは落ち込んでいたけれど、今はまだマシになりました。

施設の皆はとても優しいです。

口調が乱雑な子や、眠り姫のような男の子や、涙が綺麗な子や、お魚のように速く泳ぐ子や、学生の人達、色々な人がいて飽きません。

そこにあなたがいたらもっと素敵でしょうけれど、贅沢は言いません。あなたはきっとお空に溶けて私を見ていてくれるはずですから。

覚えています。あなたが話してくれたこと全て。しっかりと。

毎日は楽しいですが、やっぱりあなたに会いたいです。恋しいです。

そんな気持ちをこの手紙に同封しておきますね。どうかあなたに届きますように。

敬具

あなたが大好きな私より


……


「ふう…。」

蝉がうるさく鳴いている庭を私は歩いていた。彼のお墓へと行くために。

ヒマワリと朝顔でできた花束を持って、彼のお墓の前に立った。毎月毎月、季節の花束と手紙を届けるのが私の役目。彼はお花が好きだったから。

初めて私がお花を送った時の嬉しそうな彼の姿が残像のように脳裏に過った。あの頃はとても幸せだったな。

「ねぇ、ペタルダ聞いてください。今日アディスが初めて笑ってくれたんですよ。明日は雪が降りますね」

私はそっと近状報告をした。彼に届いているのかは分からないけど、こうしていると彼が側にいるような気がして嬉しかった。側で静かに聞いてくれるような気がした。

「おかしなこともあるものですね。あなたにも見せたかった…」

抱えていた花束をお墓へ置いて、私は静かに手を合わせた。


愛しいあなた。

この手紙と花束があなたの元へ届きますように。

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ちいさな図書館 そるこ @siokonbu0soruko

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