ハワイに渡った熊本の新陰流(五)新陰流の奥義と荒木又右衛門
剣道の話[四]
和田喜伝
▲新蔭流の奥義
は
刀を
▲竹刀の長短
──本文終──
新陰流の奥義は柔をもって第一としてある、敵を対する心持は柳に風、と言う事は前回前々回に解説したように、まさに灌頂極意の巻にある
「なかなかに 弱き
の事でしょう。(近況ノートに「灌頂極意之巻」の和歌の部分の写真を掲載してるので、よかったら見てください」
この章では新陰流の
以前紹介した『神道無念流剣術心得書』にも熊本の新陰流の構えは中段とありますし、他の回国修行者の記録でも熊本の新陰流は中段やセイガンとしているので、この構えで試合をしていたのでしょう。
ところで、現代剣道では殆どの人が中段(正眼)で、たまに上段があるくらいで、剣道と言えば中段ですが、江戸時代の流派を見ると、上段で試合を行う流派がかなり多かったようで、セイガンが大多数という訳ではなかったようです。記録を見ると、
※1 肥後藩の新陰流では左に構える事を陽、右に構える事を陰とします。そして光は真っ直ぐ差す事から、左右に偏らない事を例えて中央を光陰とします。陰陽光陰の構え(技)の絵図も近況ノートにアップロードしておきましたので参考にしてください。
竹刀の寸法
現代の剣道で使われている竹刀は三尺八寸(約117㎝)、昔風に言えば柄一尺(30㎝)ちょっと、刀身二尺八寸程度(86㎝)という所です。
これに対して新陰流では柄七寸(21cm)、刀身二尺五寸(75cm)で全長三尺二寸(約97㎝)となります。現代の肥後・新陰流の木刀やシナイ(袋竹刀)もこの程度の長さのものを使用しています。
ところで、真剣では
それに対して、現代の竹刀は真剣として考えると、刀身は二尺六寸と常寸より三寸(約9㎝)ほど長くなり、柄も同じ程度長くなります。全長で言えば六寸(18cm)は長くなるので、竹刀のイメージで常寸の真剣を見ると「案外短い」という感想を抱く人がいるようです。
ところで和田喜伝は「
剣道(剣術)の歴史を見ると、
大石進の竹刀は全長五尺三寸、現代の竹刀よりさらに一尺五寸(45cm)は長い、長大な竹刀でした。大石進は身長七尺と言われる大男でした。
さすがにその流行には実戦的ではないとストップがかかり、
明治から現代にかけて、何人かの剣道家の先生が「三尺八寸でも長い」、と真剣の常寸と同じ長さの竹刀を使う事があったようですが、これは全く一般的になっていませんし、現代の竹刀の長さを使う剣道家から、短い竹刀では技術が伸びない、叩き合いになる、といった批判される例がいくつもあるので、現代の剣道技術はこの三尺八寸という長さで効果的に修練する事が出来て、有効に使えるものなのかもしれません。
ただ、和田喜伝はさらに短くしなければならない、と言っているので、そこは現代の一般的な剣道とは違うでしょう。
※2 香取神道流、鹿島新当流、新陰流(柳生)、二天一流、心形刀流、小野派一刀流など多くの流派の木刀に鍔がありません。神道無念流、甲源一刀流、馬庭念流などの流派が鍔のある木刀を使用しています。
※3「大石進種次の佩刀」道標 2021/12/28 http://kanoukan.blog78.fc2.com/blog-entry-5393.html
※4
参考:全日本剣道連盟「剣道の歴史」第二部組織史第五章「講武所の組織と武術家の登用」
荒木又右衛門
鍵屋の辻で有名な荒木又右衛門ですが、江戸時代から色々な俗説や逸話が多い人物のようです。
講演では柳生宗冬と面談、立ち会った逸話が語られていますが、さすがに本文にもあるとおり、作り話だと思われます。又右衛門が有名になった仇討ちの寛永11年、柳生宗冬は二十歳そこそこです。まだ柳生但馬守宗矩も健在な時期ですね。
また、柳生流の看板を使ったら死刑、みたいな話も時代劇や講談の定番ですが、実際どうだったのでしょう。柳生石舟斎の弟子筋で柳生流を名乗っている人はそこそこいましたし、さすがに呼び出して誅殺なんて事をやってたのか?と思います。
それはともかく、互いに構え合って打ち込まずに互いの実力がわかり~という話は講談等でよく見かけますが、いつ頃からある話なのでしょうね。
次回は和田喜伝のその後と、本文全体を再度掲載して終わりたいと思います。
(敬称略)
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