第11話 嶋田
学校で嶋田の席が無くなってから、四日がたった。もう八月も終わりだ。
放課後に早乙女が花火大会に誘ってきた。
「どうです? 明日土曜日で花火大会があるんですけど、行きませんか」目を輝かせながら言われた。
「わ、分かった。い、いこう、か」
明日の集合時間を決めて、「帰ったらラインします」と言い残し、帰っていった。
翌日。マンションの前で待ち合わせし、海に向かって歩いた。
会場に着いたら、出店で買い物をした。焼きそばに、リンゴ飴に、お好み焼き。
彼女は微笑みながら、リンゴ飴を噛んでいた。
でも、俺はずっと引っ掛かっていた。嶋田の存在だ。どうして、自殺をしたのか……。
花火が夜空に上がった。俺達がいる神社からはよく見えた。
俺はTIME REAP を使った。
ここは病室。夜の八時を越えていた。嶋田が死ぬ一時間前。
起き上がって靴を履き、部屋から出た。
巡回している看護師に見つからないように、ゆっくりと歩いた。
病院から出て、真っ先にマンションに向かった。嶋田はたしか、家で練炭自殺のはずだ。
玄関で呼び鈴を鳴らす。たのむ、出てくれ。
だが、出てくるはずもなく、ノブを引いたら鍵があいていた。
「だ、大丈夫?」煙が部屋を充満していた。
「北川、来るな!!」
「俺はもう、死にたいんだよ」
「お、お願いです。死なないでください」
「うっせーよ、お前になにが分かるんだよ」座り込んでいる嶋田、その前には練炭が……。それをなんとかして消そう。そう思って近づく。
「近づくな!!」
「嫌だ!!」
「俺がお前を絶対に死なせねぇ、人生で初めて友達になってくれた。俺はそんなお前が好きだ」なんとかして嶋田を外に連れ出さないと……。
「俺は何度も死のうとした!! でもそれで得られたものはなにもない。いつも絶望感と罪悪感が襲う。でも、俺には早乙女がいた。あいつが助けてくれた。俺もお前を助けたい」
「お願いだ!! こっちに来てくれ」
「早乙女のことを……よろしくな……」
嶋田が倒れた。俺は助けられなかった。
「くそったれぇぇえ!!!」
俺は自分の無力さを改めて痛感した。仲間一人、友達一人すら助けられなかった……。
花火が豪快に鳴り響く。その光景はなんとキレイなんだろうか。
俺は早乙女の顔を見た。
彼女の目は輝いていた。俺はこの子を守らなくてはいけない。
花火が散る八月が終わり、九月を迎えた。
宗教団体『レード』がまた、国に武力行使を仕掛けてきた。
すると、お決まりのように国は『国家非常事態宣言』を発令。俺達はまた、政府に利用される。
俺達は『レード』を倒さなくてはいけない。この世界を……仲間を救うために……。
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