第8話 捕らわれの身
八月を迎え、どんどん気温が上がる今日。俺は部屋で溜まっていた夏アニメを見ていたとき、ラインの通知が来た。確認すると嶋田からだった。
『よぉ、北川。暇だったら〇〇デパートに行こうぜ』
俺は分かったよ、と打ち込んだ。すると一瞬でメッセージが返ってきた。
『OK、じゃ〇〇〇駅に十時集合な』
俺は時間を確認すると、約束の時間まで、三十分もないことに気づいた。やべー、駅まで二十分掛かるのに……。
俺はTVを消して、玄関に向かい、セミの鳴き声が響く外に出た。
「おっせーぞ、五分遅刻だ」嶋田が笑いながら注意してくる。
「い、いや、仕方がないじゃないですか」俺が弁解する。もとはお前が無茶苦茶な時間に呼び出すから悪いんじゃないか。
「なぁ、俺達は友達だろ? 敬語はよそうぜ」
「は、はい!!」
嶋田が溜め息をつく。
電車に乗って三駅隣のデパートへと向かった。
「なぁ、俺さ、実はさ早乙女をデートに誘おうと思っててさ、その服を買いにいくためにお前を誘ったんだよ」電車の中で誇らしげに語る。
「そ、そうなんだ」
早乙女の言葉が脳内で甦る。
『お願い……死なないで。私……貴方のこと……こと』
早乙女のあの言葉はどんな意図があったのだろうか。今となっては分からない。でも、俺は早乙女が好きだ。
でも、早乙女には俺なんかより嶋田のほうがお似合いかもしれないな。俺みたいな陰キャよりも……。
デパートの服屋で嶋田がコーディネートをひたすら考えていた。
「なぁ、白のパーカーに合うのってデニムだよな?」そんなこと俺に聞かれてもわかるはずがない。
俺の服は、早乙女に選んでもらったものを着ているので、全く分からない。それまでは、赤のチェックのシャツに、黒のパンツを主に着ていた。
「そ、そ、そうだと思うよ」慌てて答える。
一時間かけて服を購入し、嶋田はご機嫌だ。
フードコートにある、有名なバーガーチェーン店で昼食を済ませた。
「なぁ、お前さ俺が早乙女に告白してうまくいくと思うか?」
俺はなんて答えたらいいか分からず、曖昧に答える。
「ふーん、まさかお前ってさ、早乙女のこと」
着信音が鳴った。俺の携帯だ。相手は早乙女だ。
「もしも……」
《お願い……助けて》
「どうしたんですか!!」
「おい、誰からだ」
《今、倉庫にいるんで……》
電話が切れた。
「早乙女さんが助けを求めてる……」
「なに、早乙女に何かあったのか」
簡潔に先程のことを伝える。
嶋田の目が真っ赤に燃える。
「早乙女の場所が分かった。お前も来い」勢いよく席から立ち上がる。
走りながな駅の改札を通り、電車に乗り込む。
「タイムリミットは二十分。それをこえると早乙女は強姦され、殺される」
「あいにく近くてよかったぜ、奴等の好き勝手にはさせねー」声が少なからず震えてる。
俺も身体中、恐怖感でうずきまくっている。
嶋田は何故か語りだした。
「奴等は宗教団体『レード』超能力者を、片っ端からぶっ殺しまくっている」
「政府は隠蔽していたが、七月の武力行使は『レード』だった」
「この能力は……持っているだけで何の良いことも起きない。逆に最悪なことばかりだ。もう嫌だ。こんな障害と向き合うとか」泣き出した。もう理性が欠如しているのだろう。
目的の倉庫に着いた。
「おい、お前らよくも大切な仲間を」嶋田が叫ぶ。それに気がついた奴等はこちらに銃を向ける
早乙女は椅子に縛り付けられていた。その前にビデオカメラがあった。
「ふざけんじゃねーよ、この野郎!!」目がまた真っ赤に燃えた。
嶋田が弾丸を避けていく。もしかしたら余地能力で全ての動きを把握したのだろうか。
俺も後に続いて倉庫の中に入っていく。
嶋田が奴等を全員殴り付けていた。
「大丈夫か? 早乙女」口に貼られてあったガムテープを剥がす。
「嶋田くんに北川さん。私は全然大丈夫でしたよ」そんな言葉とは裏腹に涙目だった。
嶋田は溜め息をついた。
良かった。早乙女が死ななくて。
俺は深く安心した。
すっかり夕方の五時頃、俺は帰宅時に、ちょうど晩御飯を切らしていたので、嶋田と早乙女と別れ、コンビニに入った。
さっと弁当を買って、店から出て、裏道に入った。こっちのほうが近道だからだ。
後頭部に衝撃がはしった。
地面に倒れこんだ。
意識が朦朧となっていった……。
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