第6話 理解
『軍事学園』は、能力が解放されている人もいれば、『HAZARD』の疑いだけの人もいる。
今の研究段階では、まだ分からない部分もあるが、能力は自然と二十歳を迎える前に消えるらしい。理由は、体内にある細胞が時間とともに自滅してしまうからだと考えられている。
『軍事学園』が設立したとき、政府は「防衛大学の前の段階で、青年をより、軍人としての意識、能力、忍耐を訓練するための国立高校」だと釈明した。だが、それは表向きの考えに過ぎない。
そのときにある男が実験台として、学園に籍を置いていた。
政府は必死だった。何故ならその男は国家テロを企てようとしていたのだから。
その男は国に恨みを抱いていた。男の兄は軍人で、作戦中にその兄は見捨てられ、現地で射殺されていたから。
捕まった後も、刑務所に入れようとしたときに、男は「俺以外にも能力者はいる」と言っていたらしい。警察は勿論、最初は死刑を免れる嘘だと考えていたらしいが、男の能力を目の当たりにしたら、政府と連携をとり、すぐに『軍事学園』を設立した。
膨大な予算をはたいてまで、政府は何をしたかったのか……。真相は分からない。
男は、血液を取られ、腕を切断され、眼をもぎ取られた。毎日酷い実験という名の拷問。
それでも男は耐えた。世の中の理不尽さに。
四年後、男の能力が消えた。年齢は二十歳を過ぎていた。
男は政府の隠蔽の為にこの世から抹殺された。
早乙女が話したこの学園の裏の話。いや、これ以上にもっと残酷なことがあったのかもしれない。
俺はサンドイッチを食べながら聞いていた。えっと、早乙女は焼きそばパンだ。
どうして昼食中にこのような話に発展したのかは忘れてしまった。だが、まぁ、話の成り行きというものだろう。
でも、どうして早乙女はこんな話を知っていたのだろうか。謎だ。
早乙女は「では、さようなら」と言い残し、屋上から消えた。
俺もそれに付いていくように、屋上から出た。
下校中にある考えに至った。
小島は相変わらず陽キャ。
嶋田は青春を送っている。
早乙女は必死に『HAZARD』を特定しようと動いている。
俺は何なんだろうか。何を目標に生きているんだろう。
分からない。決まっていない。これじゃただの生き死にだ。
俺は夕日を見つめながら言った。「もう嫌だ」と。
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