第4話 カフェ

 国を守るために、間接的に人を殺す。もはや、人を殺すのを正当化している。

 

 集団的自衛権の発動で、わりとスムーズに防衛できていると思う。

 

 向こうの国(集団的自衛権の条約に加盟している)は俺達の存在を知っていた。

 

 その上で実際に俺達の能力を確認すると、かなり驚いていた。



 『国家非常事態宣言』が解除されるまで一ヶ月が掛かった。

 

 その一ヶ月はかなりしんどかった。何故なら、人の死を間近で感じていたからだろう。

 

 仲間が死んで、また甦らせての繰り返し。もしかしたら俺も死んでいたかもしれない。それを早乙女が甦らせている可能性もある。

 

 でも、やっと終わった。

 

 政府は、この防衛は反社会的組織の関与だと発表した。

 

 加盟国が人工衛星で全世界を監視していたが、怪しい動きは確認出来なかった。

 

 では、一体何処の国の組織がテロ行為を行ったのか、政府は原因不明として片付けた。



 七月の半ば。

 

 早乙女が新しい『HAZARD』を発見したらしいので、図書室で、俺と嶋田で三人で話し合っていた。

 

 どうやって能力者を見つけるか? それは嶋田という予知能力を持っている奴を利用することらしい。

 

 「今回の『HAZARD』は、小島という人らしい。彼は私立麗佳学園しりつれいかがくえんに通っている高校生」

 

 「あの……そ、その子特徴とかは……」俺が尋ねた。

 

 「学校での人気者。顔はイケメンで女子からかなりモテている」早乙女が淡々と言った。

 

 「北川とは正反対の奴だな」嶋田が笑った。余計なお世話だ。

 

 「じゃ早速、小島さんを誘拐しに行くわよ」



 麗佳学園に着いた俺は、そこの学生にかなり驚いた。何故なら、見た感じ、全員が陽キャだからだ。俺もこの学校に通っていたら陽キャに生まれ変わっていたかもな。

 

 「嶋田さん? 小島さんは何処ですか」

 

 「この学校の体育館でバスケをしているな……。えっと、六時頃に学校から出てくるな」

 

 今は大体五時。あと一時間以上ある。

 

 「では、あそこのカフェで過ごしましょう」

 

 学園の前にお洒落なカフェが佇んでいた。

 

 「私、カフェが大好きなんですよ」

 

 彼女は足早に向かった。

 

 俺達はその姿をボケッと見つめていた。

 

 「なぁここだけの話、俺さ、早乙女のこと好きなんだよね」嶋田が言った。

 

 俺はその言葉に驚いた。嶋田の容姿はかなりチャラく、髪の色も金髪。見る感じに恋愛対象はギャルだと思っていた。

 

 でも、その言葉を聞いて、何故か心がもやもやした。



 「やったー!! パンケーキ」

 

 いつもはどっちかと言うと、男らしい彼女だが、パンケーキを目の前にしたとたんに一気に女の子らしくなった。可愛いな。

 

 彼女が一口一口ゆっくりと食べている。

 

 「んー、とっても美味しいです」手を頬っぺたに当てて言った。

 

 言い方もぶりっこに変わっている。

 

 嶋田が腕時計で時刻を確認する。

 

 「そろそろだな」

 

 学園に目を向ける。

 

 「あれだな、小島は」嶋田が言った。




 

 『応援コメントお願いします。作者の原動力になります』

   

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る