第2話 能力

 五月の半ば頃。

 

 俺は駅のホームである女子に会い、人生が変わった。

 

 学園というのは『軍事学園』のことだった。その学園は、将来軍人になるために、訓練や忍耐を学ぶところらしい。

 

 学園が保有しているマンションに引っ越した。

 

 親がなかなか許してはくれなかったが、学費が免除だけあって、最終は許してくれた。



 駅のホームで出会った彼女。名前は早乙女亜香里と言うらしい。

 

 そういえば彼女は何者なんだろうか。能力のこともあまり聞けていないし。

 

 俺はキッチンに足を運び、ちゃちゃっと袋ラーメンを作った。

 

 ラーメンを豪快にすする。

 

 昔から料理は苦手だ。学校の調理実習のときも、俺が手掛けた料理は大抵不味くなる。だから、俺は家庭科の授業では、いつも以上に嫌われていたな。まぁ、今では笑い話だな。

 

 すると、ラインの着信が来た。陰キャの俺が初めてライン交換した相手はそう、早乙女だ。

 

 『明日貴方のボサッとした髪を切りにいくわよ』と書かれていた。

 

 俺は震える手でメッセージを打ち込んだ。分かった、と。

 

 送信したあとに自分がかなり緊張していたことに気づいた。

 

 俺はラーメンをまた豪快にすすった。



 翌日、待ち合わせの時間二時間前に起きて、Tシャツとズボンに履き替え、朝食を取ってすぐに家を出た。

 

 待ち合わせの駅に五分前に着いた俺は、辺りを見渡す。

 

 「ちょっと北川さん! 私より遅く着くとか……」早乙女の声だ。

 

 「ごめんなさい」

 

 「あとさ、服も買いに行くよ」

 

 どうして髪を切りに行くだけなのに、服も買いに行くのだろうか。俺はアニメのキャラしかいない頭の中をフル回転させて考えたが、なにも分からなかった。



 髪のスタイルはウルフカット。

 

 眼鏡を外し、コンタクトレンズを付け、ベージュのジャケットに、中は白いパーカー。そしてズボンは濃いめのジーパン。

 

 服屋の鏡で見た俺は、別人みたいだっだ。

 

 「カッコいいじゃない。シンプルが一番ね」早乙女が言った。

 

 俺は自分に見とれていた。



 帰りの電車の中で早乙女に質問してみた。

 

 「あの、前に言っていた能力のことなんだけど、詳しく教えてくれるかな」

 

 早乙女はゆっくりと話した。

 

 「前も言ったけど、貴方の能力は人の時間を操れる。でも、その能力は人を殺してしまう」そうだ、この部分が引っ掛かっていた。

 

 「どうして人を殺してしまうの?」

 

 俺がいた二号車に人は一人もいなかった。

 

 「貴方のように能力を持った人のことを政府は『HAZARD』と読んでいる。そして同時に『HAZARD』多数いると考えられている。そして、最初の『HAZARD』を発見し、政府が研究班を立ち上げさせ、能力について探った」

 

 「そして分かった情報は、能力はある体に有害のある細胞を元に構成されていることが分かった。その細胞は、体内に入ると体の中の鉄分を奪い、体全体の酸素を吸収する働きを持っている。でも、免疫能力を持っている人だけ、その働きは抑えられるらしい。でも、確実ではない。適合者でも、いつ免疫力を失うかは分からない」彼女の顔が曇る。

 

 俺もいつかは死ぬのか……。まぁ、人生最悪だったしな。

 

 「ーーそこで政府は『HAZARD』を隔離させることを決断した。その学園が『軍事学園』なの」

 

 俺は今すぐに死にたいと思った。でも、死ねない。人生は最悪だな。




 

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