第5話『誤った解釈』

太腿から血を流すフェネックは彼に回収された。流石のワシミミズクもどうすればよいか、理解が行動に結び付かなかった。


「うぅっ...」


「さあ、クソギツネ。

お前は俺にした事を覚えてるか」


「そんな迷惑になるような事してないさ...。

君の被害妄想なんじゃないかな...」


彼は舌打ちすると彼女の胸の辺りを右足で強く踏みつけた。


「うっ....」


「被害妄想だ?舐めた口聞きやがって。

いい加減にしろ!」


立てないフェネックの顔面を足で7回程蹴った。


「痛っ...」


可愛らしい小顔が赤くなる。


「自分で犯した罪を認めねえ...。マジでクズだな」


すると、彼は彼女の腹部に足を置いたまま話し始めた。


「お前の担当だった時期、俺は来園客の子と、付き合っていた」






人生で初めての一目惚れだった。

彼は彼女と連絡先を交換し、連絡を取り合っていた。


ある日、彼女が仕事場に来るという話になった。

その時の担当がフェネックだった。







「お前のした罪を単刀直入に言うと、

俺の彼女を奪い取った罪だ」


「はあ...?」


「何時までしらを切るつもりだ」


下腹部を強く踏みつけた。


「んぐっ....っ...」






「ねぇねぇー、あの人誰?」


袖を引っ張り尋ねた。


「えっと...」


例え相手がフレンズであっても、“彼女”と言うのは少し恥ずかしさもあった。

だが。


「えっと、俺の彼女だ」


思い切ってそう言ったのだ。

それを聞いた彼女は、あろうことか思いがけない事を口にしたのだった。


「えー?おにいさんの彼女は私じゃないの?」


“本物”の彼女がいる目の前で、このフェネックは堂々とそう言ったのだ。


「冗談はよせよ...」


苦笑いしつつその場を乗り切ろうとしたが、


「いつも私の事好きって言ってるよねぇ?」


彼女は可愛らしい声で、そう発言した。

彼にとっては、災厄の元でしかなかった。








「お前の余計な一言でよ、俺は彼女にフラれたんだぞ。“あの動物と付き合えば”って!」


「それは、本当のことじゃないか...」


「お前の本心、わかってんだぞ?」


「は...?」


「お前の飼育管理記録見たぞ。

俺の前の飼育員、解雇されてるんだ。

その理由知ってるか?」


彼女は黙って答えなかった。


「お前の身体から前飼育員のDNAが検出された。つまり、お前が“やった”って事だよ」


「どうしてそう言いきれんの?」


「その前の前も同じ理由で解雇されてるからだ。推測するに、お前は自分の性欲解消の為に男性飼育員を誘惑した。同じ様な手口で、

俺を引っ掛けようとしたところ、俺に彼女が居たために追い払おうとして、あんな発言をした。が、それが逆に墓穴を掘る事になった。

お前の過去の資料を探ってこの仮説を組み立てた俺は、変更願いを出した。これが真実だ」


彼は淡々と口を動かし、そう説明した。


「そんなの...でっちあげに...」


「黙れ変態クソギツネ」


彼女の股を思いっきり蹴った。


「い゛っ...」


そして、彼はポリタンクを持ち出し彼女の身体の上に液体を掛け始めた。


「なっ...、なにすんのさ...!」


「お前のその腐れ切った身体を浄化すんだ。

これがお前への復讐だ」


「だからっ...私はっ!!」


「顔には掛けないでおくよ。お前の苦しむ顔を見てえからな」


彼はマッチを取り出し、彼女に火を付けた。


「ああああっ!!!熱いっ!!!!

いああああああっ...!!!」


彼女は一瞬にして火だるまになった。


「熱いっ...!!!アツいよおおおっ!!

イヤァああああああああっ!!!!」


絶叫しながら火に包まれて行った。





「...俺の人生ぶち壊しやがって。

周りの奴らの人生もぶち壊して。

ははははっ...、悪い魔女は俺が殺したぜ。

あははははははっ!!!!!!」

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