第27話 銃は剣よりも強しってそれ一番言われてるから

「射撃訓練!?」


たしかに俺はこれまでいろいろなものを武器にしてゴマモンガラと戦ってきたが基本的に武器は現地調達が多かった。

ちなみに今まで使ってきたのは設置されてたパラソルに拾ったチェーンソー。

おおよそ武器と言えるものではない伐採用具と傘といったラインナップ。


「ええ、貴方は基本的にホンソメワケベラの能力で敵に気付かれずに潜入して倒したり破壊活動したりすることはできるわ。けどそれをやったら最後、ゴマモンガラの餌になるのは目に見えているのよ」

「何!?」

「貴方学習してないの?ついさっき経験したでしょ、あなたからゴマモンガラに危害を加えればニセクロスジギンポと判断されて襲われると」


確かにそうだ。

俺は攻撃さえしなければほぼ無敵に近い能力を敵入れたが、そもそもの話こっちから仕掛けないことには無理がある。

ブロケードの言った通りいつまで俺の意識的ステルス機能がもつか分からないのだ。

だが攻撃行動の先にはゴマモンガラの群れに襲われる未来が待っている。

しかも今度は水中、相手の土俵なのだ。


「だから攻撃後に自衛できる手段が必要だ。そういうことか」

「そうよ。貴方はいままで地上で戦ってきたけれど今度からは水中がメインの戦場になる。だから水中でも戦えるようにならなければならないわ」


なるほど理にかなっている。

もし仮におれがオリジンを暗殺できたとしてもその後に待っているのは大量のゴマモンガラに水中で喰い尽くされる未来だ。

そんな特攻兵器みたいな扱いは御免こうむる。

だから水中で自身の身を守る力を身につける。

それが今俺ができることなんだ。


「そう。だから貴方にぴったりの銃を用意したわ。これよ!」


ニーナが音の鳴らない指パッチンを披露すると奥からゴリウスが布に包まれた何やら巨大なものを持ってきた。

見たところというかシルエット的に銃に近いものだ。

だが銃は火薬の燃焼反応で弾丸を射出するものだ。

酸素の供給のない海中で機能するだろうか?


「これを」


ベールをはぎ、ゴリウスの手の中にあったのは決して綺麗とは言えないアサルトライフルだ。

一般的に有名なカラシニコフAK48と違って銃床はなく、ハンガーのような支えが代わりについている。

普通なら掴んで銃を反動から支える弾倉マガジンはやけに縦に大きく太く、持ちずらい構造をしている。

グリップについては半魚人のぬるぬるハンドでも掴みやすく扱いやすいように工夫されている。


「なんだ?これ?」

「APS水中銃です。元々はスペツナズが使っていたというソビエト連邦が1960年代に開発した特殊作戦用水中銃です。それを我々が高水圧環境下でも使えるようにしたものです」

「すっげえ!」


弾丸を見せてもらうと普通の弾丸の弾頭に長さ11.5cm程の細長い針状のものが生えている独特な構造をしている。

不親切に長い弾倉の太さはこれが原因か。

これだけ長い弾丸を格納するのだから弾倉もそりゃあ大きくなるわな。


「水中銃は地上で使うものと異なり弾丸は水の抵抗による影響を少なくするため矢のように細長く作られているのよ。発砲時に弾丸が銃口から出て行くまで時間がかかるから銃身内の圧力過大による破裂を防ぐためライフリングが彫られていないことが多いしね。どう?気に入った?」


ニーナの解説んほとんどが理解不能であったことは置いておいて、この未成年でしかも銃禁止国家日本で銃が打てるなんてワクワクする。

これが、俺の武器。これがこれから俺を支えていく相棒なんだ。


「ああ、気に入ったよ。よろしくな、相棒」


俺はこれから愛銃にする予定の水中銃に挨拶してニーナに向き直る。

パラソル、チェーンソーときて大躍進。

だいぶ旧型の銃だがそれでも頼りになることには違いない、最高にして最適なメインウェポンだ。


「そのマガジンは26発しか装填できないから注意しなさい。あとセミオートとフルオートも両方できるから状況に合わせて使いなさいな。訓練が終わったらご褒美も用意しているわよ」

「ああ、今度こそちゃんとした飯が出るんだろうな」


俺は水中銃を片手にそう返した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る