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リー…ン


リー…ン



声がする


桜の匂いがしはじめた春の夜



リー…ン



その声は、


彼の唇からこぼれていた




「………、」




熱がぶわりと俺の体を持ち上げる


暗い部屋 部屋の影 月の下で


そのシルエットが誰だか覚えている



もうここには来ないはずのひとだ



どちらも言葉を失って、次の瞬間 彼は掻き消えた


誰もいなくなった二階の一室


七花ななかの部屋




「………果楽……」




その名は、


俺の唇からこぼれていた



誰かの夢が絢織られるのを感じながら。

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