第43話

「俺……お前にちゃんと告白しないまま……なんかなーなーで付き合ちまっただろ? だから……あれだ……その……ちゃんと告白したくて……だから、恋愛成就っていうか……」


「……フフ……何それ?」


「あ、笑うなよ! 俺はあの時からずっと考えてたんだぞ!!」


 笑い始める玲佳。

 そんな玲佳に俺は反論する。


「じゃあ……してよ」


「え……」


「してくれるんでしょ? 三年越しの告白」


 玲佳は嬉しそうな顔で俺の顔を真っ直ぐ見てそう言ってくる。

 いざとなると、なんだか言うのが恥ずかしくなってくる……。

 

「あのさ……俺は……今までも……これからも……お前の事……その……好きだから……だから……これからも俺と一緒に居てくれよ……」


 照れながらではあったが、俺は玲佳に今の自分の気持ちを伝えた。

 玲佳とは「じゃあ付き合う?」「いいよ」見たいな絞まりの無い感じで付き合い始めてしまった。

 ちゃんと玲佳に好きだと言ったのは、これが始めてかもしれない。

 俺は玲佳の返事を待っていると、玲佳は「ふふっ」と笑いながら俺に言う。


「それって、プロポーズ?」


「え!? あ、いや……そう言う訳ではないけど……いや、でも嫌いって訳じゃないし……でもまだ結婚なんて……」


「うふふ……バーカ」


「え……」


 玲佳はそう言って、俺の頬にキスをする。


「さ、行こ」


「あ……え? お、お前、今!」


 玲佳は俺の側を離れると、すぐに先に一定し待った。

 俺は右の頬に残った玲佳の唇の感覚を思い出しながら、玲佳に付いて行く。





「……仲直りしたんですね」


「おい、何ニヤニヤしてやがる……」


「いや……別に……ぷぷっ……これからも俺と一緒に居てくれよ……」


「岬!!! てめぇこの野郎!!」


 高井さん達と合流し、俺達は昼食を取ろうと店を探していた。

 高井さんと玲佳さんが仲直りした事は、高井さんがトイレに行っている間に玲佳さんからすべて聞いた。


「ロマンチックで良いじゃ無いっすか!」


「お前馬鹿にしてるだろ!! 年上を馬鹿にしやがって!!」


「こっちだって巻き込まれてんすよ!! 少しくらい笑わせろ!」


 高井さんは顔を真っ赤にしながら、俺の首を絞めて来る。

 でも、仲直りした様子で安心した。

 あのまま気まずい旅行になったらどうしようかと……。


「はぁ……いつまで馬鹿やってるのよ、早く行くわよ」


「そ、それもそうだな」


 玲佳さんに言われ、高井さんは俺の首から手をどける。


「まぁでも良かったっすよ、これでやっと旅行らしくなる」


「ごめなさいね、私たちのせいで……お昼は私が出すわ、迷惑掛けちゃったし」


「いや、そんな悪いっすよ、高井さんが出してくれるらしいので、大丈夫です」


「おいコラ次郎! 調子に乗るんじゃねぇ!」


 俺は高井さんに小突かれながら、昼食を食べに店に向かう。

 昼飯は昼食屋になった。

 お昼から少し時間が経っていたので、お客さんもあまりおらず、スムーズに席に座ることが出来た。


「高井さん、そのカツ丼どうですか?」


「うめぇけど?」


「あぁ、俺もカツ丼にすれば良かったかな?」


「お前のローストビーフ丼も美味そうじゃん、なら一口交換するか?」


「良いんすか?」


「俺もそっち気になるしな」


 俺と高井さんはお互いの食べてる物を交換して食べ始める。


「あ、カツ丼うま!」


「ローストビーフもうめぇな!」


「……」


「……」


 俺と高井さんが、そんな事をやっていると隣の愛実ちゃんと玲佳さんがジト目で俺たちを見てくる。

 そして、愛実ちゃんは俺の方に自分が食べている生姜焼き定食の肉を差し出してくる。


「次郎さん、あーん」


「ん? どうした愛実ちゃん?」


「あーん」


「いや、別にだいじょ……」


「あーん!」


「恥ずかしいし……」


「あーん!!」


「あ、あーん……」


 俺は愛実ちゃんの圧に負けて、愛実ちゃんからあーんして貰って豚の生姜焼きを食べる。 

「あ、ありがとう……美味しい」


「次郎さん……」


「な、何?」


「次郎さんと高井さんって……出来てませんよね?」


「なんでそうなる?」


 何を馬鹿な勘違いをしているのか……。

 そんな事を俺が思っていると、高井さんも玲佳さんにそばを突き出されていた。


「あ、あーん………玲佳、サンキュー」


「ま、ちょっとしたヤキモチね」


「ですよね~、玲佳さん」


「そうよね~、愛実ちゃん」


 なんだか仲の良い二人。

 二人して何を勘違いしているのか……。

 その後、俺たちは午後の観光を楽しみ、宿泊している温泉旅館に帰った。





「ふぅ~……一日二回も風呂に入るなんて………案外良いなぁ……」


「高井さん……親父臭いっす……」


「うっせぇ……はぁ~極楽~」


 旅館に戻ってきた俺と高井さんは、露天風呂に浸かりながら話しをしていた。

 天気が良かったおかげで月がくっきり見えていて、すごく綺麗だった。


「高井さん……玲佳さんと仲直り出来てよかったすねぇ……」


「あぁ……言いたいことも言えたし……」


「今度からは勘弁して下さいよ」


「それは約束出来ない」


「おい」


「だってそうだろ? 喧嘩するほど仲が良いって言う位だ……長い人生の中であいつとはまた喧嘩する……」


「………はぁ……じゃあ、なるべく自分で解決して下さい」

 

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