第42話



「次郎さん、ここのお茶美味しいですねぇ~」


「お茶屋だからな」


 俺と愛実ちゃんは、温泉街のお茶屋さんでお茶を飲んでいた。

 

「いやぁ~こんな休日も良いですねぇ~」


「そうだなぁ……」


「てか、なんか年取った気分です~」


「そうだなぁ……」


「それより、高井さん達大丈夫ですかねぇ~」


「大丈夫だろ? さて、これ飲んだら次行くか」


「そうですね! 次はどこにいきます?」


「そうだなぁ……ここら辺は後何があるんだ?」


「私、温泉博物館に行きたいです」


「そんなのあるの? よし、行くか」


「はい!」


 俺たちはお茶を飲み終え、温泉博物館に向かう。

 博物館には温泉の歴史や効能、昔の温泉旅館の様子などが飾られているらしい。


「温泉博物館……温泉街ならではの博物館って感じだな」


「へぇ~昔の風呂桶ですって……どうやってつくったんだろ?」


 博物館の中は広かった。

 俺と愛実ちゃんはゆっくり歩きながら、博物館の中を見て回った。


「混浴の歴史ね……混浴に歴史なんてあるのかよ……」


「なんですかぁ~私と混浴したいですかぁ?」


「いや、全然」


「時々思うんですけど、次郎さんってちゃんと付いてますよね?」


「何がだよ……」


「ちん……」


「それ以上言うな」


 本当にこの子には羞恥心と言う物は無いのだろうか?

 俺は咄嗟に愛実ちゃんの口を押さえ、深くため息を吐く。


「この辺り周辺の温泉の歴史か……」


「確か、旅館で貰った宿泊証明書を見せると、この温泉街の温泉に入り放題なんですよね?」


「あぁ、でも風呂ってそんなに色々入らないからな……足湯くらいなら、あとで行ってみるか」


「そうですね、ここに来る間も三カ所くらい有りましたよね?」


「流石は温泉街って感じだよな」


 俺と愛実ちゃんはそんな話しをしながら、博物館の最後の展示にやってきた。


「へぇ~飲める温泉なんてあるんですねぇ……」


「飲泉って言うらしいぞ、入浴したときと飲んだときで効能が違うらしい」


「へぇ~、精力増強とかないんですかね?」


「そんな効能は絶対にない」


「えぇ~じゃあ普通に赤マムシドリンク的なの飲んで下さい」


「なんでだよ!!」


「だって、次郎さん精力薄いし……」


「はぁ? そんな事ねぇよ……ただ、現時点で愛実ちゃんに手を出すのは犯罪ってだけ」


「社会的にはそうですけど、みんなもう結構経験してますよ?」


「みんなはそうでも、うちは違うの!」


「ぶー……」


 なんで毎回こんな話しになるんだ……。

 俺はそんな事を考えながら、愛実ちゃんと博物館を出る。


「結構面白かったね」


「はい! そろそろお腹減ってきましたね」


「あぁ、もう昼過ぎちゃったもんな……高井さん達と合流して飯にしようか」


「はい!」


 俺はスマホを取り出し、高井さんに電話を掛け始めた。





「うわっ! また歪んだ……」


「あはは、もうアンタは大きい物にチャレンジしすぎなのよ」


 俺と玲佳の二人は陶芸体験の出来る焼き物屋に来ていた。

 前も玲佳と来た事がある店で、懐かしさを感じながら、俺たち二人はろくろを回していた。

 

「うーむ……前衛的なデザインになってしまった……」


「まぁ、サラダとか盛り付けるのには良いんじゃ無い?」


 俺たちは出来上がった作品を店の人に渡し、焼き上がったら自宅に届けて貰えるように手続きをする。


「あぁー面白かった!」


「そりゃあ良かった」


「久しぶりに熱中してやっちゃったわ」


 俺はそう話す玲佳を他所に、とある店を探していた。

 昔の記憶なのであまりよく覚えていないが……ここら辺だったはず……。


「うーん……」


「ねぇ」


「え? あ、どうした?」


「何探してるの?」


「あ、いや……ここら辺にお土産物屋があったと思うんだけど……」


「お土産物屋……それって……ここ?」


「え? あぁ!! ここだここ!!」


 玲佳が指さしたところに、俺が求めていたお土産物屋があった。

 そう、ここが三年前に玲佳と一緒に来たお土産物屋だ。


「あぁ……そう言えば来たわね……」


「あぁ、ちょっと見てくる!」


「あ、ちょっと!!」


 俺は急いで店内に入り、とある商品を探し始めた。

 そして俺はついに目的の商品を見つけた。


「あった……」


 俺はその商品を手に取って確かめる。

 それはただのどこにでもあるお守りだ。

 でも、それは俺と玲佳にとっては大切な物だった。

 俺はすぐにそのお守りを購入して、店を出る。


「お待たせ」


「もう、いきなりどうしたのよ?」


「ほら」


「え? 恋愛上寿のお守り? なんでこんなの買ってきたの?」


「はぁ……やっぱり覚えてないか……」


「何よ? どう言う意味?」


「三年前……一緒にここきた時……次に来たらここのお守り買うって約束だったの覚えてねーのかよ」


「え……」


 玲佳は少し考え込むと、何かを思い出したように顔を上げた。


「あぁ! そう言えばそんなこと言ったわね、そのとき一番あげたいお守りをあげるって……でも、なんで恋愛上寿?」


「いや……あの……本当はこれを渡したくて……今回の旅行を温泉に変更したんだ……」


「え……」


「あの……なんて言うかその……もう一個約束しただろ? ここに次来たとき……もう一回お前に……その……こ、告白するって……」


「え……あ、えっと……ご、ごめん……なんでそんな約束したんだっけ?」


 はぁ……やっぱり覚えてないか……無理もないよな……。

 そんな事を思いながら、俺は玲佳にその理由を説明しはじめる。

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