第17話
*
時刻は23時、いい加減眠くなってきたので、俺は布団をロフトに敷いて寝る準備をしていた。
「ぶー……次郎さんもベッドで寝れば良いのに……」
「それは色々と問題があるだろ? ぶーぶー豚みたいに鳴いてないで、愛実ちゃんも寝る準備しなさい」
「寒くて一人じゃ寝れません……次郎さん……温めて……」
「湯たんぽを用意してあげるから、それを抱いて寝なさい」
「次郎さんどんだけなびかないんですか……」
「まぁ、愛実ちゃんの体に興味は無いし……」
まぁ、嘘だけど。
興味があると言えば、俺も男だ、本当はメチャクチャ興味がある。
だが、ここで下手な事を言って愛実ちゃんをその気にする訳にはいかない。
まだ付き合っても居ないのに、体の関係になるなんて間違ってる。
「はふぅ~次郎さんの香り~」
「うっ……あんまり匂いを嗅ぐな」
布団の準備をしていると、愛実ちゃんが俺のベッドにうつ伏せになり、匂いを嗅ぎ始めた。
「やめろ、あんまり匂いを嗅ぐな!」
「えー、だってベッドを貸してくれるって言ったのは次郎さんですよぉ~」
「くっ……この変態……」
「次郎さんに対してだけはそうかもしれないです……」
「頼むから否定してくれよ!!」
「あ、あと夜中に変な声が聞こえてきたら、恥ずかしいので耳を塞いで居て下さい……」
「何をする気だよ! やめろ! 俺のベッドで変な事をするな!!」
「あ、混ざりに来ても良いですよ!」
「だから何をする気だ!!」
寝る前のツッコミも終えて、俺は愛実ちゃんの言葉をすべて聞かなかった事にして、歯を磨いて布団の中に入った。
「次郎さん」
「なんだ?」
布団に入り、電気を消した途端、愛実ちゃんが俺に話し掛けてきた。
「床……堅くありませんか?」
「大丈夫だよ」
「……寒くありませんか?」
「大丈夫だって」
「でも……風邪でも引いたら……」
「暖房だって掛けてるんだ、そんなに寒くなんて無いよ」
なんだかんだ言って、俺の体を気遣ってくれているのか……。
ただ単に俺と寝たいだけじゃなかったんだな……。
少し俺は愛実ちゃんを見直してしまった。
「あの……寒かったらこっち来てもいいですからね?」
「ありがと……でも俺は大丈夫だから、愛実ちゃんこそ大丈夫? 寒くない?」
「実は……私は少し……」
「もしかして寒かった?」
「はい……」
マジか……もしかして愛実ちゃんって冷え性?
俺は結構丁度良いと思うんだが……。
「分かった、じゃあ今湯たんぽを……」
「いえ……大丈夫です」
「大丈夫ですって……風邪でも引かれたら、俺が困るよ」
俺はそう言って布団から起き上がり、湯たんぽを準備をしようとする。
しかし、ロフトを下りようと階段の方を見た瞬間、俺は肩をがっくりと落とした。
「次郎さんが一緒に寝てくれれば十分ですぅ~!!」
「いつの間に……」
愛実ちゃんは暗闇に紛れて、少しづつ階段を上ってロフトに近づいていたのだ。
愛実ちゃんはロフトに上がり、俺の方にジリジリ近づいてくる。
「はぁはぁ……次郎さん……一緒に寝ましょ……」
「なんでそうなる」
「だって……人肌恋しいんですもん」
「それを言うには後5年早い!」
「もう!! 良いじゃ無いですか! 本当に何もしませんから、一緒に寝るくらいして下さいよ!! 私の体に興味無いんでしょ!!」
「いきなりキレるな……」
逆ギレし始めた愛実ちゃんをなだめ、俺は頭に手を当てながら、どうすれば愛実ちゃんが普通に寝てくれるか考えていた。
「次郎さん……」
「今度は何?」
「好きです」
「……急になんだよ」
突然愛実ちゃんは改まってそう言い始めた。
「私……次郎さんが多分凄く好きです……」
「……なんだよそれ……」
ストレートにそう言われると、なんだかやっぱり照れてしまう。
「自分でも分からないんです……こんなに……こんなに誰かを好きだと思ったのって……」
「それが……なんだよ」
「だ、だから……その……正直どうしたら良いのか分からないと言いますか……出来れば次郎さんに早く私を好きになって欲しいと言うか……」
「そ、そんな事を言われても……」
彼女の気持ちが嬉しくない訳では無い。
しかし、俺もこんなに誰かに好意を向けられた事なんて無い。
だから、どう答えたら良いか分からない。
彼女の気持ちに応えるべきか……それとも……。
「愛実ちゃん……前も言ったと思うけど……俺は君に恋愛感情を抱いていない……そんな中途半端な状態で愛実ちゃんとは付き合えない」
「むぅ……私が年下だからですか?」
「そう言うことじゃ無い……俺と君は……出会って日が浅い……愛実ちゃんは俺をよく知らない、もちろん俺も愛実ちゃんをよく知らない」
「そう……ですけど……」
「だから……ゆっくりじゃダメか?」
「………」
「あ、いや……そのなんだ……ゆっくりと言っても一年も待たせる訳じゃないぞ! 二・三ヶ月くらいで答えを……」
「……や……です」
「え?」
「そんなの嫌です!!」
「えぇ……」
いや、なんでそうなるんだよ……。
この流れは「わかりました……私、待ちます!」とかそう言う流れじゃん!
なのになんでこうなるの!
「いや……だから人の話聞いてた!?」
「聞いた上で言います! そんなに待てません!」
「いや、そこは待てよ!」
「私は次郎さんとイチャイチャしたくて仕方ないんです! 一緒に手を繋いでデート行ったり、二人で寝たり!」
「だから、少し待ってくれと……」
「じゃあ試しで良いです!」
「は?」
「お試し期間です!」
「何それ?」
突然の彼女の提案に俺は首を傾げる。
「今から一ヶ月、私とお試しで付き合って、次郎さんが私を好きになったら、本交際と生きましょう」
「なんだ、そのスポーツジムの無料お試しコースみたいな流れは……」
「そうすれば、私は次郎さんとイチャイチャ出来るし、次郎さんは私の事を知ることが出来て、一石二鳥です!」
「どや顔で言ってるけど、俺に特が全然無いから!」
「ありますよ! 女子高生とイチャイチャ出来ます!」
「俺は別にイチャイチャしたい訳じゃ無い!」
「良いから一緒に寝ましょうよぉ~」
「えぇーい! 離せ!! ベッドに戻れ!!」
「いーやーでーすー!!」
その後、結局疲れ果てた愛実ちゃんはロフトの上で寝てしまった。
俺は愛実ちゃんに布団を掛けてやり、自分のベッドで寝ようとしたのだが、愛実ちゃんから抱きつかれ、結局一緒に寝る羽目になってしまった。
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