113.ただのアリーのお姉ちゃん

ソレは様々な人に姿を変えていた。


ある時は、私、またある時はアリー、お父様、お母様、ヒエンにレイカにキョウカ……私の知っている人から知らない人にまで様々に姿を変えているが、全員その表情は憎しみというか、負の感情に彩られていた。

これだけ様々な人に姿を変えていくソレを見た私は、何となくソレには実体という概念がないのだろうなと思った。


「憎イ……!憎イ……!全テガ憎イ……!!」


様々な人に変わるソレは憎しみを吐き続けながら私を見る。


「オ前モモット憎メ!ソシテ!我ト一ツニナレ!サスレバオ前ノ望ミヲ叶エテヤル!」


ソレは私にそう言って私はそっち側に引き込もうとする。が、もちろん私の答えは


「お断りよ」


「何ィ!!?」


私はアッサリとそう言い切ったので、驚愕の表情を浮かべるソレ。だから、私はしっかりと説明してやる事にした。


「いい!まず!望みは妹の成長を見守る事よ!そして!これは、誰かの手を借りるなんて以ての外!私の手でやるからこそ意義があるのよ!だいたい、私はこれから忙しいのよ……「私」との約束もあるけど、そんなのなくても妹の成長を見守っていきたいし、そうなると、まずは私の冤罪を晴らさなきゃいけないけど、まぁ、これはキョウカがお父様に頼んで何とかしてくれるわよね。それに、アリーに相応しい人も見つけなきゃいけないわよね……そして、その人といずれ結婚して、出産……天使のアリーから産まれた子供なんだから、きっと天使に違いないわよね!けど、そうなると結婚費用とか育児費用とかいるはずだから、もっとお金を稼がなきゃ……今度は何に手を伸ばすべきかしら……やっぱり貴族令嬢は美容にこだわる傾向があるし、そっち方面を攻めるべきよね。それに!アリーにももっと美しく出来るし!いや!アリーは元々美しい天使のような女神のような存在だったからいらないわね〜!」


「オイ……!イイ加減ニシロ……!?」


おっと……ついついテンション上がって色々熱く語りすぎちゃったわ……反省反省……


「ナンナンダ!?オ前ハ!?何故オ前カラハ負ノ感情ガ憎シミガ出ナイ!!?」


「だから、さっきあんだけ言ったでしょ。憎しみに囚われる暇がない程私は忙しいんだって……」


そうそう。これからの事を考えたら、もっとマダム・Aの活動を広げてかないといけないしね。ぶっちゃけ、誰かを憎む暇があるなら、妹の為にお金を稼ぐわ。


「ナンナンダ!?オ前ハ一体ナンナンダ!!?」


私?そうね〜……桐島杏奈という自覚はあるけど、桐島杏奈はもう死んだ訳だし、アンナ・ステインローズではあるけど、アンナ・ステインローズでもない……だったら、私を指す言葉で最も適切な言葉は……


「ただの!アリーのお姉ちゃんよッ!!!!」


私はそう言ってソレを殴り飛ばしてやった。

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