102.対峙
私はいつものように授業を受けていたけれど、授業に全く身が入らなかった。ついつい、チラチラといつも私の傍にいてくれるお姉様の席を見ては溜息をついていた。
お姉様は私のせいで謹慎処分になってしまった。正確に言えば私のせいじゃないし、お姉様も私のせいじゃないよと笑ってくださるんでしょうけど、何故だか私は私のせいでお姉様がこんな不当な処分を下されたという気持ちを強く感じていた。何故そんな風に感じるのかよく分からないのだけれど……
全ての授業内容が終わり、さっさと寮の部屋に戻ろう。そして、難しいかもしれないけど、お姉様のいる部屋に入らせてもらえるように交渉しようと思い、急いで寮へと帰る準備をした時、机の中に身に覚えのない手紙が入っていた。
最近色々な事があったので、これも嫌がらせの一つかもしれないという頭があったけれど、何故か私はこの手紙にはそういった嫌がらせの類はないという確信があった。なので、私は普通に手紙を開封した。私の不思議な確信通り、その手紙自体に何らかの仕掛けはなかった。そして、肝心の手紙の内容は……
『色々あったけれど、私達仲直りしましょう。ここで待っているわ。 アンナ・ステインローズ』
と、書かれていた。これはどう考えても罠だ。そもそもお姉様と喧嘩らしい喧嘩なんてあんまりした事がないし、もし伝言があるならヒエンを私に寄越すはずだ。だから、これは誰がどう考えても罠だと分かるものだ。
けれど、何故だろうか……私はこの手紙の主と一対一で対峙しなくてはいけない。そんな気持ちが湧いてきていた。例えそれが、絶対に罠だと分かっていても……だから、私は私に寄ってきたレイカに
「ごめんなさい。これから1人で行かなければいけない所があるの」
と、言った。普段のレイカなら私の1人になりたい気持ちを察して行かせてくれるのだけれど……
「申し訳ありません。お嬢様。あのような事が起きたのです。私がお嬢様の傍を離れる訳にはいきません」
と、レイカは真顔でハッキリと断った。
そうよね。当然だわ。レイカじゃなくても、普通の従者だって、私が狙われてると分かってる状況で、私を1人にさせるなんて事をするはずがない。そう。分かっていたから私は……
「ッ!?お嬢様!?何を!!?」
突然巻き起こった風がレイカの周りを包み込むように舞う。咄嗟の事で対応出来なかったのか、レイカは驚いて対応出来なかったのか驚愕で目を見開いていた。そして、レイカはその風の力に抗えず、風がレイカをどこかへと運び込んでいった。まぁ、場所はお姉様のいる所と分かっているけれど……
そして、私は……手紙に指定された今は使われていないという空き教室らしき場所に足を運ぶと、そこにいたのは……
「待っていたわ。アリー」
エリザベス・マグダエル公爵令嬢が冷笑を浮かべて立っていた。
そして、その右手には……ナイフが握られていた……
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