99.犯人はアンナ・ステインローズ!?

私は、万全といえる対策をとったから、アリーの嫌がらせはこれでどうにか出来る。そう思っていた。


しかし、結果は……この数日の間に、アリーの教科書やノートはナイフのような物でズタズタに引き裂かれ、更衣室にあったアリーの体操着も同様に引き裂かれ、更にはアリーの下駄箱にあった靴までも……ナイフのような物で傷つけられていた。


けれど、常にそこにはヒエン・レイカ・キョウカの3人が監視し続けたのだから、犯人らしき人物は目撃し、捕縛してる……はずなのだが……


「それらしい人物は一切目撃してないですって……!?」


3人から返ってきた回答は、それを行なったとされる犯人どころか、怪しい人物は一切見てないという物だった。私は驚いて目を見開くが、困惑してるのは3人も同様だ。


「はい。アンナ様に言われ、その場所を監視していたのですが……」


「それらしい人物は一切近づいてきませんでした。1番疑わしいエリザベス公爵令嬢も……」


「更に付け加えるなら、何かの魔法を使った感じもありませんでしたね〜……」


3人がそれぞれ不思議そうにしながら首を傾げる。怪しい人物を目撃してないどころか、何かの魔法すら使った形跡すらないなんて……

3人は魔法が使える。特に、キョウカは色んな技術を叩き込まれているので、魔法への反応も私程じゃないにしろ敏感のはずだ。だとしたら、3人に怪しまれないような魔法を行使して犯行を行なった?私のような無属性の魔法?いや、でも……無属性の魔法でも使えば気づかれるだろうし……だとしたらもっと特殊な魔法……けど、そんな特殊な魔法の使い手なら、話題になってるはずだし……


そんな風にあれこれ私が考えていると……


「お姉様!お待たせしました!」


アリーが日直のような仕事を終えて私の席にやって来た。私はすぐにいけないいけないと思って無理矢理笑みを作ってアリーを見る。

最近、色んな事があったせいで、アリーは精神的に参ってるように感じていた。けれど、私に心配をかけたくなくて、私の前では無理にいつもの自分を演じたいる。そんな風に私には見えた。

本当は、私に遠慮しないで全部吐き出してほしい。そう思っているのだけど、無理に引き出してアリーが傷つくのを恐れて、私も結局いつものように接するしか出来なかった。


「もう終わったの?」


「はい!お姉様!ですから、一緒に寮まで帰りましょう!」


私は微笑んで了承し、アリーと一緒に寮に帰ろうとしたのだけれど……


「申し訳ありませんが、アンナ・ステインローズ伯爵令嬢。お時間をいただきますよ」


そこに現れたのは、カイン王子達だった。4人は前と同じ様に冷ややかな眼差しで私を見ている。私は思わず身構え、発言しようとするが、それよりも早く動いたのはアリーだった。アリーは私を庇うように私の前に立つと


「お姉様に何の御用でしょうか?」


と、カイン王子達以上に冷ややかな眼差しでカイン王子達を睨みつけてそう言うアリー。これには私を含めてカイン王子達も動揺するも、すぐにカイン王子は優しげな微笑みを浮かべ


「あなたの周りで起こってる嫌がらせの犯人が分かったのですよ。アリー。犯人は……アンナ・ステインローズ伯爵令嬢です」


カイン王子ははっきりと自信満々にそう言った。アリーの視線が更に冷ややかな物になる。


「あなた達はまだそのような事を……!」


「残念ながら、今回は証言者がいるんです」


「証言者……?」


私が首を傾げてそう言うと、リンクスとケインに促され3人の貴族令嬢らしき人物が私達の目の前にやって来た。恐らくこの3人がカイン王子の言う証言者なんだろう。


だが、正直な私の気持ちとしては……誰?であった……

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