100.謹慎処分
カイン王子に呼ばれやって来た令嬢3人は名乗ったけれど、どの人も私にさっぱり覚えのない人達だった。が、その3人の令嬢が証言するには
「私達は!アンナ・ステインローズ伯爵令嬢に、そこにいるアリー・ステインローズ伯爵令嬢に嫌がらせを行うように指示されました!」
との事だった。いや……何言ってんの?この令嬢達……私は正直あなた達と顔を合わせた覚えすらないんだけど……それに、先程のキョウカ達の会話で、怪しい人物は一切あの場に近づいてないのは確認済みだ。
私は3人に聞くように視線を送ったが、3人は首を横に振った。つまり、3人共あの令嬢達を見ていないという事になる。まぁ、どの道この令嬢達が3人の目を誤魔化して犯行を犯すなんて不可能だ。つまり、この令嬢達は嘘の証言をしているのは間違いない。
「……嘘ですね」
キッパリと令嬢達にそう断言したのはアリーだった。アリーの冷ややかな視線を受け、思わずたじろぐ令嬢達。
「私はお姉様と四六時中行動を共にしていますが、あなた達をお見かけした事は一度もありませんが?本当にあなた達はお姉様に指示されたんですか?」
アリーの反論に令嬢達は完全に言葉が詰まってしまっている。これが、いわゆる蛇に睨まれたカエルってやつね。
「それに……お姉様は私に構うのに忙しくてあまりお友達がいません」
アリーはキッパリそう断言する。
ちょっ!?アリーさん!?そんな事ないわよ!?お姉様確かにアリーを守るのばっかりかまけてるけど、友達の1人ぐらいいるわよ!ほら!サルガオ君とか!プールの一件以来、昼ご飯にバナナをご馳走してくれる仲になったわよ!まぁ、サルガオ君誰にでもそうしてるけどね……
はい。ごめんなさい。ちゃんと白状します。今世は全くと言っていい程友達がいません。あれぇ?おかしいな……前世はそれなりに沢山友達いたのに……どうしてこうなったんだろうか……私が地味にショックを受けていると……
「俺もアリー嬢の意見に賛同だ。その令嬢達は明らかに嘘の証言をしている」
そう言ってアリーの援護をするように現れたのはヴァン王子だった。
「ヴァン……それにアリー嬢も……大切な婚約者や姉を守りたい気持ちは分かりますが……」
「別にそれだけじゃない。本当に自分達の証言が正しいなら、ちゃんと反論するはずだ。しかし、アリー嬢の言葉を受けた彼女達は反論するどころか、完全に萎縮してしまっている。これでは証言が正しいかどうか判断出来ない」
ヴァン王子の正論に、更に令嬢達は萎縮してしまい、完全にカイン王子達の影に隠れてしまってる。
「……ですが、彼女達の証言が嘘であるという証拠はありませんよね?」
カイン王子は微笑を浮かべてそう言った。
「ありますよ。証拠なら」
「私達はアリー様の机があんな事になったので、アリー様の嫌がらせを防ぐために教室や更衣室や下駄箱を監視しましたが……」
「怪しい人物は見かけませんでしたし、そちらのご令嬢方もお見かけしませんでしたよ〜」
今度は、ヒエン・レイカ・キョウカの3人がそう反論する。が、カイン王子はあくまで微笑を浮かべたまま
「残念ですが、1番疑わしいアンナ・ステインローズ伯爵令嬢と仲が良いあなた達3人の証言はあてにできませんよ」
と、キッパリとそう言い切った。確かに、身内の証言は参考にしないというのは捜査の鉄則ではあるけど、そこまで頑なにすることない気がするけれど……やっぱり、カイン王子達……どうもおかしいわね……
「だが、兄上。やはり俺としてはこの令嬢達の証言も……」
「あてには出来ない。と言いたいんですよね。ですが、現状証言者がいて、その証言者が嘘をついてるかどうか分からない。つまり、未だに1番の容疑者はそこにいるアンナ・ステインローズ伯爵令嬢です。そして、1番疑わしい容疑者に私の婚約者の傍をウロウロされたくない。よって……」
カイン王子はそこで一息吐いて、私を冷ややかな眼差しで睨みつけた。
「アンナ・ステインローズ伯爵令嬢。貴方に寮の部屋での1週間の謹慎処分を言い渡します。これは、ウィンドガル王国第2王子としての命令と受け取ってください」
「兄上!?それはいくら何でも早計過ぎるぞ!?もしもそこにいる令嬢達の発言が偽証だったら……!!?」
ヴァン王子は慌ててカイン王子を説得するが、カイン王子は聞く耳持たないと言った雰囲気だ。自分で自分のやってる事の意味に気づいてないなんてやっぱりあのカイン王子らしくない。やっぱり何かありそうね……。仕方ない。ここは……
「分かりました。その処分。しかとお受けします」
「おい!!?」
「お姉様!!?」
私が素直ぬ処分を受け入れた事に慌てるヴァン王子とアリー。正直、1週間アリーに近づけないのは私にとってかなりの苦行だが、これで、私が謹慎される事で敵は確実に動くはずだ。そこを確実に叩いてみせる。
「よろしい。では、部屋までは……」
「1人で行けます。監視するならご自由にどうぞ」
「お姉様……」
私を心配そうに見つめるアリー。大丈夫よ。アリー。どんな状況でも私は必ず貴方を守ってみせるからね!その為にまずやるべき事は……
「頼んだわよ。キョウカ」
「は〜い。お任せを」
そう言って一瞬で姿を消すキョウカ。流石は性癖以外完璧なメイドだ。ちゃんと朗報持って来たらご褒美(お尻叩き)してあげないとね。
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