93.一仕事終えました!

「ふはあぁ〜!!一仕事終わったぁ〜!」


私は笑顔で額の汗を拭う。あっ、一応バカ皇子は死んでないわよ。私のもう一つのおまけ1時間後には受けたダメージを回復させる魔法はかかってるからね〜。折れた骨やら内臓やらもしっかりバッチリ回復してるわよ!まぁ、ご自慢の顔の腫れや痣は治さないようにしたけどね。痛覚は無くしてあげただけでも十分よね。

で、そのバカ皇子はようやく1時間経って気を失える事が出来るようになったおかげで、今は泡吹いて股間も直視出来ない程濡れて気を失っている。


「さてと……あんた達はもう龍の巣に戻っていいわよ!今回の件はたまたまあんた達がここに通りかかって、暴れたくなって暴れたって事にするけどいいわね?」


『了解っす!!!!ボス!!!!』


龍達は私に敬礼っぽいポーズをし、龍の巣に帰って行った。本当に、あの子達は素直で可愛いわよね〜……何でみんなあんないい子達を恐れるのかしらね〜?


「キョウカ」


「はいはい〜!何ですか?」


次に私はどっかで見ていたであろうキョウカに声をかけると、キョウカはすぐに私の前に現れた。


「記録の方は?」


「お嬢様が現れる前のシーンまではバッチリ記録しましたよ!」


「そう。じゃあ、ここで伸びてる傭兵団全員捕まえて記憶操作の魔法をかけておいて。私じゃなくて、龍の襲撃にやられたってね。実際そうだしね」


「バルカス皇子にはかけなくてもいいんですか?」


キョウカはチラッとバルカス皇子を一瞥してそう言った。私は軽く溜息をつき


「こんなバカ騒ぎを起こしたバカの言う事を聞くバカがいると思う?」


私がそう答えると、キョウカは「確かに……」と言って、伸びてる傭兵団を全員引きずるように何処かへと連れて行った。恐らく、人気のない場所で魔法使って、お父様かアスラン陛下に突き出すつもりでしょうね。本当に性癖以外は完璧有能メイドだし……


私はとりあえず、他の人が来るまで休もうと思い、アリーの隣で、木を背もたれにして腰かけた。すると……


「ん〜……」


アリーが寝返りをうとうとしてなのか、こちらに倒れ込み、そして……私の膝の上にアリーの頭がぁぁぁ!!?わぁ……こうして見ると、妹はお母様似の美人さんになったけど、寝顔はまだあどけないのね♡本当に可愛いわぁ〜♡

って!?そうじゃなくて!?うむ。今アリーの頭を退けるとアリーが起きてしまうかもしれない。いや、別にもう起こしてもいいんじゃない?ですって、いやいや……こんな可愛い妹が幸せそうに寝てるのに、起こすお姉ちゃんがどこにいますか!うん。とりあえずこのまま膝にありがたい重みを感じましょう!


すると、アリーの髪にキラッと光る物が見えて、私は思わず微笑む。


「コレのおかげで助かったわね……」


私はアリーの髪を撫でつつ、その髪に付いている髪飾りに触れた。



それは、私達が15歳の誕生日を迎えた時だった。また、誕生日の日に2人っきりでお出かけしていたら、私はある髪飾りに目を奪われた。


「あっ……この髪飾り可愛い……アリーに似合いそう……」


アリーに似合いそうな可愛い感じの髪飾りだったので、思わず足を止めてそれを見ていたので、当然アリーは気づいて


「あっ!確かに可愛いですね!それにコレ……色違いで同じ物がありますよ!この色はお姉様に似合うと思います!だから、コレ!お揃いで買いましょう!」


と言って、2人して色違いの同じデザインの髪飾りを買ったのだ。私には似合わないと思ってたけど、お揃いという言葉に負けて購入したのよね〜……



「まさか、それが今日役に立つなんてね……」


私は自分の髪に付いてる、アリーとは違う色の髪飾りに触れてそう言った。


あの時、傭兵団が抱えていたアリーを私の所に戻したのはテレポートの魔法だ。ただ、テレポートの魔法は実は私はあんまり上手く使えない。転移の魔法を使えるのに謎である。

だから、きちんとテレポートするには、アリーの姿形がはっきり見えてる状態じゃないと出来ない。しかし、その為にはアリーが巻かれていた布を解かれなくてはいけなくて、それはつまり、一瞬でもあのバカ皇子がアリーに触れる事になる。

そこで活躍したのが髪飾りだ。テレポート魔法に、自分と同じ物を持ってるものを一瞬でテレポートさせるものがあった。色違いだけど同じ物であると判断されたおかげで、バカ皇子に触れさせる事なく、アリーを無事に救出出来たのだ。


「ん〜……お姉様……」


ん?アリーが私を呼ぶ声に思わずアリーの顔を見るが、アリーは規則正しい寝息をたてて眠っていた。どうやら寝言のようね。夢に私が出てきてるのかしら?だとしたらそれは光栄ね!


「お姉様……大好き……」


アリーは寝言でそんな言葉を口にして、思わずドキッとしてしまう。全く……この娘は……今のセリフは私じゃなかったら勘違いして大変な事になってたわよ……


「アリー……私も大好きよ……貴方の事は必ず私が守ってみせるからね……」


私はそう返答してアリーの髪を撫でた。


私は、お父様達がこちらにやって来るまで、アリーの頭のを撫で続けた。

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