85.ヴィンドガル王国第2王女様は何処かで見た気がする……

さて、新しいドレスの仕立ても無事に終わり、ヴィンドガル王国建国祭まで後数日という所で、私とアリーは王室の、しかも、王家の方々が食事をする部屋にいた。というのも……


「アンナ・ステインローズ伯爵令嬢と、アリー・ステインローズ伯爵令嬢はこのパーティーは初めてだからな。簡単な打ち合わせという名の食事会をと思ってな」


若干混乱してる私に、アスラン陛下が穏やかに笑いながらそう説明してくれた。えっ?アリーがこのパーティーはじめてって……それってもしかして……


「アリー……もしかして私の為に……?」


出席を嫌がる私の為に、アリーまで出席しないでいてくれたの?という意味を込めて、私が小声でアリーにそう尋ねたら、アリーはニッコリと笑い


「当然です。王家のパーティーよりもお姉様の方が大事です」


いや、そこは王室のパーティーの方が大事だと思うんだけど……でも、私はそんなアリーの気持ちが嬉しかったので……


「ありがとう。アリー」


と言って微笑んだら、何故かアリーは顔は真っ赤にしてそっぽを向かれてしまった……。あれ?やっぱりちゃんと出席しようとしなかったのを怒ってる?トホホ……今度からはちゃんと出席しよう……


「さぁさぁ!アンナちゃんもアリーちゃんも!いつまでも突っ立っていないで座ってちょうだいな!」


リアンナ王妃が朗らかに笑って私達に着席するように促してきた。ん?なんか今……王妃様のあの笑みが、お母様の笑みと重なったような気がしたんだけど……気のせいかしら?

とりあえず、私はヴァン王子の隣に、アリーはカイン王子の隣に着席する。位置的には私とアリーは向かい合う形になっている。アリーは私と目が合うといつもの天使スマイルを見せてくれた。良かった〜。もう怒ってないみたいね……。


そして、何気になしに部屋を見回していると、まだ誰も着席していない椅子があるのに気がついた。


「あの……他にもどなたかいらっしゃるのでしょうか……?」


なんとなく気になったので、私は恐る恐るアスラン陛下にそう尋ねた。若干言葉遣いが良くないかなと思いつつも、アスラン陛下は特に気にした様子もなく気さくに答えてくださった。


「うむ。実は、私の娘もヴィンドガル王国建国祭に参加する事になってな。今回の食事会にも参加すると言っていたので、もうすぐ来るはずなんだが……」


アスラン陛下がそう言った直後、部屋からノック音がした。アスラン陛下が入室許可の声をあげると、扉に控えていた従者が重厚そうな扉を開くと……美しい金色の長い髪をなびかせたそれはもう美しい女性が立っていた。


「遅れて申し訳ありません。お父様。お母様。ヴィンドガル王国第2王女、ヴィオラルド=メイル=ヴィンドガル只今参りました」


この女性が……アスラン陛下の娘……この国のお姫様のヴィオラルド王女様……流石というか……凄い貫禄というか……けど……あれ……?なんだろう……?


「ステインローズ伯爵令嬢様方もはじめまして。弟達から噂は聞いております。ずっと会いたいと思っておりましたのよ」


ヴィオラルド王女は私達に朗らかに笑いかけながらそう言う。カイン王子達を弟って言うって事は、この方はカイン王子達のお姉さんになるのね……私とアリーはすぐに挨拶を返すも、私はどうしても気になってじ〜っとヴィオラルド王女を見てしまう。その視線に気づいたのか、ヴィオラルド王女は私の方を見て首を傾げた。


「あの……私の顔に何か付いてるでしょうか?」


「あっ!?すみません!!ジロジロと顔を見てしまって……」


「いいえ。特に問題ないですわ。むしろ、こんな可愛い方にならじっくり見つめてもらっても構わないんですが、視線の意味が少し気になって……」


まぁ、それはジロジロ見られていたら気になりますよね〜。まぁ、この際だから気になった事をハッキリと言ってしまおう。


「あの……もしかしてなんですが……はじめましてじゃなくて、どこかでお会いした事ありませんか?」


そう。私が気になっていたのはそこだった。何故がヴィオラルド王女とは初めて会った気がしないのだ。それも、つい最近にもあったようなそんな気が……

私がそう尋ねたら、言われたヴィオラルド王女だけでなく、アスラン陛下達も驚いている様子だった。えっ?何?その反応……が、すぐにヴィオラルド王女は穏やか微笑みを浮かべ


「いいえ。残念ながら今日が初めてのはずですわ。私は外交をしていて、なかなか王家のパーティーに出席出来なくて、今回ようやく出席出来ましたの」


と、答えてくださった。外交か……やっぱり第2王女様となると色々忙しいのね〜……ん?第2……という事は……


「あの……失礼を承知で尋ねてもよろしいでしょうか?」


「はい。なんなりと。私のスリーサイズでも私の好みのタイプでも何でも答えますよ」


「あっ、いえ……それはいいです……えっと……ヴィオラルド様が第2王女という事は……第1王女……つまりはヴィオラルド様のお姉様もいらっしゃるのですよね?その方は参加されないのですか?」


カイン王子は第1王子で、ヴァン王子は第2なのだから、ヴィオラルド様が第2なら、第1、つまりはヴィオラルド様やカイン王子達の1番上の姉がいるという事になるはず……

私がそう尋ねたら、ヴィオラルド王女様だけでなく、カイン王子やヴァン王子、あげくは従者の方々までも明後日の方を向いた。えっ?何?この反応は……


「アンナ・ステインローズ伯爵令嬢。君の言う通り私にはもう1人娘がいる。私とリアンナにとって最初の子供がな。ただ、彼女は色々あって今回のパーティーは出席しないのだよ」


ヴィオラルド王女の代わりに、アスラン陛下が苦笑を浮かべながらそう答えた。なんだろう?この王家の方々の反応は?みんなにこんな反応される第1王女様とは一体どういう人物なのか……?


「さぁさぁ!とりあえず!せっかくの食事が冷めてしまいますから。食事会を始めましょう。ヴィオラルド。貴方も着席してちょうだい」


「はい。お母様」


ヴィオラルド王女はリアンナ王妃に促され、用意された椅子に座る。こうして、ヴィンドガル王国建国祭の打ち合わせという名の食事会は行われ、私はマナーに気をつけながら、アリー共にこの緊張する食事会を乗り切った。

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