84.ウィンドガル王国建国祭

「ウィンドガル王国建国祭?」


お父様にそんな行事の名前を言われ、私は思わず首を傾げる。そんな行事あったかしら?と私が思っていると、お父様とお母様とアリーまでもが苦笑して私を見る。


「毎年この時期に行われる王家主催のパーティーのようなものなのだが、アンナは凄く夏を嫌っていて、あまり出かけたがらないから、声をかけなかったんだよ」


「うっ……!?それは……その……申し訳ありません……」


それを聞いた私は思わず言葉を詰まらせるもすぐに謝罪する。が、お父様は朗らかに笑って「いいんだよ」と許してくれた。はぁ〜……本当に今世のお父様とお母様はいい人達だわ……前世の両親だったら、私の首根っこひっ捕まえても無理矢理参加させてたでしょうね……


「で、今回のウィンドガル王国建国祭は今年で1000回目を迎えるにあたって、他国の重鎮達の参加もあってな……」


「なるほど……私とアリーは王子様方の婚約者ですから、流石に今回は断りを入れるのは難しいと……」


私が納得したようにそう言うと、お父様は苦笑したまま頷いた。う〜ん……流石にそんな催しならワガママ言って参加しないって訳にはいかないわね……って言うか、今までだって本当は参加しなきゃいけないのを、お父様達が気を遣ってくださったんだし……それに……何より……もう私に残された時間はないんだし、出来る限りの親孝行はしなくちゃね。


「もちろん。そのパーティーは出席させていただきますわ。というか……本来ならちゃんと参加すべきだったのに、本当に申し訳ありません」


「いや、そんな事は些細な事だから気にしくていい」


いや……王家主催のパーティーを些細な事って……お父様それは親バカ過ぎますよ……


「ふむ。しかし、そうなるとアンナとアリーのドレスを仕立てる必要があるな……」


お父様が立派なあごに手を当てながらそんな事を呟く。


「ちょっ!?お父様!?アリーはともかく!私に新しいドレスを仕立てる必要は……」


「それはダメよ!!!」


ドレスなら沢山あるし、わざわざ仕立てる必要はないと言おうとしたら、今度はお母様から否定の言葉がきた。


「アリーもアンナもこんなに可愛いくて美人なのよ!それはもう!王子なんかに渡したくないぐらいに!だから!他国にも私の娘達の魅力を伝えるようにしなきゃダメよ!!」


お母様のお言葉にお父様は首を縦に何度も振る。いや、お父様……お母様……流石に親バカが過ぎますよ……けど、コレはもうどうしようもないみたいね……


「分かりました……新しいドレスの仕立てはお任せします……」


「ふむ……では仕立てはどこに任せようか……」


「お父様。お母様。それなら私がもうすでに呼んでいますわ」


さっきまでずっと会話に参加していなかったアリーが急にそんなことを言い出した。


「ほう。アリーのオススメか……どういう人物なんだい?」


「それは来てもらったならお姉様なら分かりますわ」


「へっ?私?」


突然私の名前があがって思わず素っ頓狂な声をあげる私。


「ヒエン。レイカ。連れて来てちょうだい」


『かしこまりました』


ヒエンとレイカは声を揃えて一旦部屋から出ると、すぐにある人物を連れて戻ってきた。その人物を見て驚いて目を見開いた。


「なっ……!?あなたは……!!?」


「はじめまして。ステインローズ伯爵ご夫妻様。私、王都にある『シーカーブランド』で専属のデザイナー兼店員をしています。レイチェル・シーカーと言います。以後お見知り置きを」


そう。その人は私とアリーが2人っきりで初めてのお出かけの際に、私達の服選びに尽力してくれた人だ。って!?この人「シーカーブランド」の専属デザイナーなの!?ただの店員さんじゃなかったの!!?


「まぁ!『シーカーブランド』って言ったら王都で今流行のお店じゃない!」


「ふむ。そのお店の専属デザイナーなら腕は確かだね。娘達のドレスの仕立てをお願いしてもよろしいかな?」


「はい!それはもう喜んで!」


レイチェルさんはそれはもう満面の笑みでそう言った。その笑みを見た私は思わず頰が引きつってしまった。


そして、私とアリーのドレスの仕立てが始まった。アリーのドレスの仕立ては、私とレイチェルさんが中心になって数時間で納得のいくものが仕上がったが、私のドレスはアリーとお母様、更にはお父様まで参戦して、何時間も何時間も試行錯誤を重ねてドレスが仕上がった。


う〜ん……やっぱりこれは……私のような悪役顔の女の最高のドレスを仕上げるのは時間がかかるという事かしら?

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